1980年代に実施したものとして、「マラソンコースを歩こう会」がある。
テレビやラジオでおなじみとなった高校駅伝のコースを実体験してもらおうと、西京極競技場から国際会館まで21kmを1日で歩こうというもの。全国の視覚障害者の人たちにも点字毎日を通して参加を呼びかけ、幾人かの人が遠くから早朝出向いてきた。
西京極競技場前に9時半に集まり、30数名で出発。速く歩く人もゆっくり目の人もあって先頭から末尾までは長い列となる。携帯など持ち合わせていない時代。担当の者は、脱落した者や道順を間違えた者はないか、何度も前へ後ろへと移動して人数確認をしたものである。
西大路から北大路、堀川から紫明通りを経て烏丸通りを下がってちょうどお昼頃に御所に着く。ここで昼食と自己紹介。ゆっくりとは休んでいられない。気を取り直して後半のスタート。銀閣寺前に午後3時頃に着いたろうか。ここから白川通りの上り坂が始まる。
そして、秋の日も傾きかけた午後4時半ころ、何とかようやくゴールイン!私の初代盲導犬エドくんもさすが疲れたのか落ち葉の道路の上にばっさりとダウンしたものだ。
それでも一定の達成感は味わえた。それも3度・4度と回数を重ねて来ると感激は薄らぎ疲れだけが強くなって私は半ばで棄権したこともある。
実体験を求めた行事としては、思いっきり広い場所で走ったり自転車に乗ったり、竹馬にもチャレンジしてみようということで、隣県の希望ヶ丘に観光バスを使って出かけていったことがある。
日頃は人の手や目を借りないとなかなか思いのまま行動できない視覚障害者にとって自由に動き回れるということは日常では感じられない開放感を味わえるものだ。しかし、その開放感がついつい暴走を誘って、あやうく大事故を招く場面もあって、主催者としてはどきり・ひやりの1日ともなる。
限りなく自由な行動を提供しようとする発想を実現させるためには、仲間の晴眼者有志の理解と協力があってこそ!
やはり、あのころの若さがあってこそ、難しかろうと思うことも可能にしていく力があった。