2009年12月24日

冬夜と盲導犬

 地球は温暖化が進んで来ているようだが、よる年なみか、毎年冬が来る度に冷え込みが体にこたえるように感じる。
 ユニスとの散歩にもこっぽりフードをかぶって日差しが最もあるときを選んで出かけるようにしている。
 ここ数日冷え込みが厳しいこともあって、夜中ユニスだけが寝ているリビングに温度は低めではあるが床暖をつけてやっている。
 このご時世寒空の下で路上生活を余儀なくされている人も少なくないと聞く中で複雑な思いもある。
 この部屋に水を入れた食器を置いておくと引っかかってこぼしてしまうという心配もあることから隣の部屋に置いておいて間仕切りをユニスが通れるほど空けておくようにしている。
 ある朝、別の入り口から隣室へ入るといつもなら尻尾を振って食事の催促をするユニスが目の前にいない。あれっ!と思ってみると隣の部屋からこちらへ来られないようだ。見てみると間仕切りの開け方が狭くて出て来られなかったようだ。家人が少しでも熱が逃げないように細めにしておいたのかもしれないが。
 犬によっても違うものだな、と感じさせられた。先代のハピネスであれば、こういう場合は鼻か手でしっかり間仕切りを動かして目的を達成する。しかし、ユニスは通れないものは通れないものとして認識する。これ、盲導犬としてはまことにセオリどおりの行動である。ただ、ハーネスを付けている時と付けない時の見分けがつけばなお「グッド!」ではあるが。
 ハーネスを付けた盲導犬としての歩行にも2頭の違いはある。ハピネスは多少の融通がきくというか、ちょっときついかな、と思う幅狭の箇所でもハーネスを引っ張る場合がある。集団で歩いている時は、とにかく前へ出たい。人の間を「ちょっと失礼!」とばかりかき分けるように出ていく。というよりもユーザーである私がそれを許してしまっていたところがある。
 ユニスの場合はきわめて慎重である。これは犬の性格もあろうが10年が過ぎて私の足腰が弱ってきたこと、判断力が変わってきたことから傍に寄り添う犬が直感的に感じ取って判断してくれていることもあろうし、ユーザー自身のコントロールの仕方も自然に変わって来ているのだろう。
 以前にも書いたかもしれないが、ハピネスは、自分の敷いているシートを日のよく当たる窓際に引っ張っていってきれいに広げ、その上にゆったりと寝そべっていた。だが、夜中は室内ではあるが暖房は無い中で段ボールの箱の中でまん丸くなって休んでいたものだ。
 それより前・20年前のエドになると、犬舎を屋外においてどんなに冷える日でもその中で寝ていた。犬舎の入り口には段ボールで目張りをしたが、床下からの冷え込みは何枚か毛布を重ねて置いたとはいえ、さぞかし寒かったろうと思う。
 それでも、犬たちはそれぞれに元気に冬を超してしっかり盲導犬の仕事を果たしてくれた。
posted by よろてん at 21:08| 京都 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月29日

welcome!盲導犬

 お久しぶり!ぼく盲導犬ユニスです。
 暑くなって来てお父さんとの朝の散歩も舌を出しながら歩く日も出てきました。
 お父さんの散歩、日によってはある場所からは全く僕任せの歩きになっている時もあるよ。何処を歩いているのかお父さん自身よく分からなくなって携帯のカメラでその辺を写しておいて家に帰ってからお母さんに「これどの辺かなあ」なんて聞いているんだけど「さて!」と焦点のあっていない画像を見てお母さんも分からない時がある。
 それでも僕は何時もきっちり間違いなく家に帰って来ているよ!
 この前、お父さんと病院へ行った。この病院、まもなく丸2年通ったことになる。初めは職員の人も「外来の多い時間は避けてもらった方が」なんて言って、お父さんがクレームをつけたような時もあるけど、今や「賢く温和しい犬やなあ」と名物になっていると思う。みんなにこにこ僕を見てくれる!
 診察室、担当の医者が変わったこともあるようだけど、どうも言葉のやり取りを聞いていると、お父さんとしては頼り切ることができないようで、今度は違う病院へ行くみたい!
 病院からの帰り道、「ユニスともこうしていつまで歩けるか分からないしなあ?」なんてちょっと心細いことをいう。
 元気な内にあちこちへ行っておきたいということもあるのか、帰りのその足で旅行会社に立ち寄った。
 昨秋にもここでプランの相談をしたのだけど、僕が一緒に行くというので宿泊先がなかなかすんなり決まらない。
 今回も夏と秋の二つのプランの相談をしていたのだけど、担当者の人が「盲導犬も一緒なんですけど受け入れは大丈夫ですか?」と電話口で訊ねると、何やらあやふやな返答があるみたい。お父さんが「補助犬法というのもあるので受け入れないと言っているのなら、その理由を聞いて欲しい」と担当者に伝える。担当者は「盲導犬法というのがあるんですけど」なんて先方に話している。五つ・六つと宿泊先に電話を入れてもらうのだがほとんど受付では、らちがあかないようで、「責任者に聞いてもらうようにしてください」とお父さんが旅行社の人に頼む。折り返し責任者から返答がある所もあるようだけど再度問い合わせないと返答がなかった所もある。
 お父さんの足下で伏せながら、そうしたやり取りを聞いていたのだけど、幾つか目の問い合わせ先で電話をかけていた旅行社の人が「盲導犬は大丈夫ですか?」と電話口で訊ねた、すぐ後に、「そうですか」と受け答えたのを聞いてお父さん「ここはすんなりオーケーやったんやなあ」とほっとした言葉を聞いたひょうし、思わず僕もしっぽを振ってしまった。結局、二つの旅行をまとめるのに3時間かかってしまった。
 何処の宿舎も盲導犬を受け入れた所はほとんどなく、実際に僕のように温和しくしていることも知らぬままに「ちょっと!」と拒んでしまう。
 僕が1回行った所では「理解不足で申し訳ありませんでした。またどうぞ!」と言ってくれるのに!

 お父さんからのコメント。
 世間はまだまだ盲導犬に対する理解は乏しい。町中で歩いているときの目線は優しくなりつつあるが、宿泊やタクシー・飲食店などを利用するさいにはちょっとかまえてしまう。
 補助犬法というのが制定された中で「盲導犬受け入れ可」という店先の表示はおかしいのではないか。むしろ盲導犬を受け入れないのなら「不可」という表示を社会に向かってすべきではないかというのが私の持論である。
 先日、点字毎日の取材を受けたさいに、元盲導犬ユーザーの取材者に、この話をした。彼いわく「「welcome!盲導犬」って表示してくれたら良いのですよね」という。
 まさに、この考え方こそが正解である。
posted by よろてん at 21:43| 京都 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月11日

盲導犬の不服従

 久しぶりにブログにコメントをいただきありがとうございました。
「江戸っ子さん」の書き込みに関連して書いてみます。
 コメント:犬はもともと自動車が危険なものだと認識していない。また、犬は危険だと感じたとしてもどれだけ危険なのか分からないし、主人の傍を離れないように訓練されているのでは?
 盲導犬の場合、訓練の一つの項目として、「不服従」というのを取り入れています。
これは、ご主人のユーザーの指示であっても危険を察したら、あえて、その指示に従わずに止まったり移動したりすることです。
しかし、現実にこの学習がきちんとできているかどうか?
 近い将来、環境に優しいハイブレッドカーなどが台数を増して走るようになると、今までは、車のエンジン音を聞いて車の動向を確認し、横断歩道を渡たったり、走行してくる車を避けるようにしていた一人歩きの視覚障害者にとっては、音もなく近づいて来る車は恐怖の存在にすらなります。
 本来であれば、こうした危険を回避するためにも、不服従のできる盲導犬が傍にいてくれたら心強いことでしょう。
盲導犬のトレーニングとして、この不服従を何処まで学習させていけるのか?気になるところです。
 コメント: 重要な事は、白い杖を持つ人や盲導犬を認識したときに運転手は、どうすべきか? 法律的な裏づけとして、そのような学習を行っていないからだ。
車の運転免許の教育の中でも「白杖や盲導犬を見かけたら」という学習が行われているはずですが、私の傍を徐行もせずに走り去る車はありますね。
「なんでこんなに小さくなって遠慮して歩かんなんねん」と、特に雨の日など泥を跳ねてスピードも緩めずに通り過ぎるドライバーにはぼやきたくなります。
 また、自転車の横暴ぶりにも困ったものです。ハーネスを持たない方のフリーハンドになっている右手にハンドルがビシリと当たって来ることがあります。そんなとき、思わずたしなめる声を出したくもなりますが、今日そんなルール違反をするやつに下手なことは言えません。
 とにかく免許更新の際には教育を徹底してもらうとか、自転車乗車のルール違反に対する罰則規定くらいつけていくようにしないと、行動の自由を制限されている「行動面」での社会的弱者と言われる人達はますます暮らし難い世の中になってきますね。
 白杖や盲導犬のハーネスがドライバーからは、どれほど確認できるものなのでしょうね。視覚障害者の中には「できるだけドライバーからも目につきやすい派手な色の上着などを着るようにしている」という人もいます。
 安全な歩行を確保していく為にも考え合っていきたい課題です。

posted by よろてん at 13:29| 京都 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月08日

盲導犬と事故

 静岡県で、横断歩道を青信号で渡っていた盲導犬ユーザーと盲導犬が、右折してきたトラックに跳ねられ、ユーザーである視覚障害者は頭部外傷、盲導犬は即死した。これは、05年9月のことである。
 新聞によると、この事故について、犬を無償貸与していた財団法人「中部盲導犬協会」(名古屋市)が、トラック運転手と運送会社を相手取り、計約540万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴していたという。
 詳しくは、インターネットで「盲導犬・事故」で検索していただければ何件かの記事がヒットしてくる。
 同じ盲導犬1ユーザーとして、いつ我が身にもおこるか分からないという出来事である。
 中部盲導犬協会といえば、かつて「盲導犬サーブ」として有名になった所である。視覚障害者と盲導犬サーブが歩いていたところ、車がつっこんできて、その事故でサーブは片足を失ってしまった。その事故を伝える報道は「視覚障害者のご主人を助けるためにサーブは車に飛び込み犠牲精神を発揮した」というような書き方をした。
 事実関係は分からないが、盲導犬が車に向かっていくようなことはないと思うし、仮にそうであったら恐ろしいことだ。
 その後、この報道をきっかけにサーブを前に出して資金集めをしているということも聞いている。
 今回の訴訟はそうしたものとは違うが、一部の新聞は「目の不自由なお年寄りをかばい、トラックにはねられて死んだ盲導犬を…」というタイトルをつけているところも。
 盲導犬はハーネスをつけているのだから、運転手はそうしたものに極力気をつけねばならないとか、もっとドライバーにも分かりやすい表示はないのだろうか、などといったコメントをしている社はなかった。
 ただただ「けなげな盲導犬がかわいそうに!」という思いを読み手に与えたのではなかろうか?
 各種報道において、あるいは関係団体の啓発において、盲導犬を美化するようなことに終始せず、社会や市民が今後どのように関わっていったらよいかを問いかけるものにしていってもらいたいものだ。
posted by よろてん at 14:07| 京都 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月12日

褒めること

 先日、盲導犬ユーザーの会のチャリティーコンサートがあって出かけてきました。
 今年はマリンバと炭琴の演奏。演奏者が紹介されたように、なるほど備長炭を使っただけに、その音色はクリスタルで「すみきった」ものでした。
 小学生のころ布に包んだ木琴をかかえて学校へ行ったことなどを、同年輩の者同士懐かしんだものでした。

 演奏の合間に、盲導犬に関わる繁殖犬・子犬(パピーウォーカー)それぞれの大変さや心温まるお話を伺いました。
その後、盲導犬ユーザーのNさんのスピーチがありました。このNさんのパワーには常々敬服するばかり!
 今回も、関東圏から新幹線を乗り継いで会場の西宮まで出て来られました。
 パートナーの盲導犬と一緒に北海道から九州まで、日本中何処へでも出て行かれる。
 Nさんに言わせれば、「海に囲まれた日本、人に尋ねたり、協力を得さえすれば 何も怖がることはない。とにかく声を出していけば誰かが手を貸してくださる。じっとしていては新しい出会いや発見はない」と言われる。

 いつもユウモアたっぷりのお話に楽しませてもらうのですが、今回も涙が出るほど大笑い!その雰囲気を再現することはかないませんが、Nさんのおしゃべりになったことの幾つかをひろってみます。
 盲導犬と生活している中で大切にしていることは「グッド・グッド」と褒めること。褒められることによって盲導犬はますます良いお仕事をするようになる。
人間同士の生活だって同じ。誰だってホメルところはあるはず。それをうまく見つけて褒める。奥さんに「今日のエプロンはきれいだね」であっても良いじゃないですか。
 盲導犬と駅へ向かう道、シルバーカーを押したお婆さんが「危ないから一緒に行ってあげましょう」と声をかけてくださる。常なら家の人に「一人で外へ出ない方が良いですよ」と言われているような人かもしれない。声をかけてもらったことでもあり、そのお婆さんの歩みにあわせて歩きました。盲導犬と歩いた方がよっぽど安全に早く歩けるんですよ。おかげで予定していた電車にはきっちり乗り遅れてしまいました。ボランティアや手助けは「過ぎてはいけませんね」。
 私と盲導犬が歩いていると、人の視線は下からゆっくり上がって来るのです。
まずわんちゃんに注目です。そうして徐々に目が上がってきて最後に私の顔です。
まあ私達は外出する時に、顔はさほど気にしなくても良いかも!
 私たち視覚障害者も、見えないなりの楽しみ方をしています。この「なりの」というのがミソです。けっこう楽しんでいます。

 多少脚色してしまったかもしれませんが、おおよそこうした内容でした。
 笑いの中にも頷けることがいくつもあり、また一般の人にも知らせる事柄が多く含まれていて、やはり実行力から来る力は大きいとまたまた感じさせられました。

posted by よろてん at 23:54| 京都 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月12日

盲導犬ユニスとの尾道旅行 その2 (手足と口で感じる観光)

 1186023671l.jpg「暑い!」とは贅沢かも?絶好の行楽日和。
 尾道でも風光明媚として知られる千光寺へ向かう。かなりきつい坂道。それでも下りよりは昇りの方が良い。下りは1歩間違えば転げ落ちそうな不安にとらわれるし、膝のダメージも大きい。やはり昔の古傷のせいもあるのだろう。

 坂道の途中、相撲取りの実際の手形が岩盤に刻まれている。武蔵丸の手形と我が手を比べてみたりする。松の木の根っこが岩を割いて伸びているのにも触れる。この坂道は、「こんな坂道も宅配します。」という黒猫ヤマトのテレビの宣伝にも使われているという。ちょうど、その車がよいしょと昇って来る。
 やれやれ登り切ったところは心地よい風が吹き、やや霞のかかった空のようだが瀬戸内の風景が見事に広がっているようだ。ここの除夜の鐘も有名らしい。
 乗車すれば3分で下山するというケーブルカーに犬たちも一緒に乗り込む。
 降りると、そこは妙宣寺。お庭にゴザを広げてもらって炎天下、尾道ならではの名物をいただく。まずは尾道ラーメン、すすっているときは辛からず、油のしつこさなく美味し
くいただく。残った汁をみるとけっこう濃厚そうな感じ。次に、干し柿のような形をした蒲鉾(名前を忘れてしまった)。そして、卵アイスクリーム。しつこさがなく比較的あっさりとした口触り。舌で味わう観光も満足!
 本堂に上がり、ご講話を拝聴した後、ここの住職さんの趣味であるという篠笛の演奏を聴かせてもらう。リクエストにでた「千の風」も譜面無しで上手に吹かれる。宗教家によっては、この歌には肯定的でないようなことも何処かで聞いたが、ここでは全くそうした雰囲気はなかった。
 この後、盲導犬ユーザーのお一人のNさんのお話。「私は何処へでも出かけるようにしています。最初は自分の住んでいるご町内。それから在住の市、そして県と。そうする中で多少の関わりからでもお知り合いが増えて来る。そして全国へ。日本の周囲は海なのだから、何処へ行っても、それ以上迷ってしまうことはない。といったエネルギッシュな話をされる。とてもじゃないが私などにはできぬパワーである。
 座敷に上がっている間、盲導犬たちは協会の職員に見てもらっていたのだが、靴を履いて降りていくと一斉に持ち主向かって飛び込んで来る。
 午前中に歩いた坂道のダメージを人間も犬も感じながら駅までの最後の力を使っての歩きとなる。万歩計は1万歩に近い。
 十分に体感で尾道を感じた二日間。受け止めてくださった皆さんありがとう!
 参加した者は心地よい疲労感を感じながら、それぞれの帰途についた。

 盲導犬もお疲れ様でした。
posted by よろてん at 20:49| 京都 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月10日

盲導犬ユニスとの尾道旅行 その1(にぎり仏作り)

1186387623l.jpg
 晴天の朝を迎えた。
 半袖のシャツの上にサマーセーターという軽装で、ユニスにもコートを着ていざ出発。帽子をかぶっていても暑いくらい!
 
 同じ協会の出身盲導犬ユーザーの会の研修・交流会は、毎年秋に、地元のユーザーが中心になって企画・担当して開催している。

 尾道駅に着くと、今回お世話をしてくださったユーザーのFさんとサポート役のYさんが暖かく出迎えてくださった。
 ユニスは、久しぶりに出会った仲間たちに興味津々、あちこちの仲間に向かってぐいぐいと引っ張っていく。
 さて、これから観光。尾道は、お寺が数珠繋ぎに並ぶ町とか。
 22頭の盲導犬と25名の視覚障害者。この集団を安全に誘導すべく、地元の福祉関係の大学生などが誘導サポートについてくれた。
 毎年、場所を変えて交流会をする目玉の一つは、地元の人たちに盲導犬と視覚障害者のことを直接関わる中で知ってもらいたいという思いがあってのこと。そういう意味では、今回の尾道は20数名の学生たちを中心とした市民の方々にお手伝いしてもらえて良かった。特に、男性の学生の優しく手際の良い関わり方は、今日の若者たちのマイナスイメージとなる報道が反乱する中で、彼らのような青年たちもいることをもっと皆に知らせてもらいたいという思いになる。

 まず、向かった所は「握り仏」で有名になっている持光寺。座敷に上げてもらうと外の残暑が嘘のような涼やかな風邪が通り過ぎる。ご住職の説明の後、いよいよ目の前にある粘土を左手に握って、世界で一つのお守り仏作り。根っからあまり工作は得手でない。傍にいる家人が「眉毛は?」というので、細棒の先で筋をつけたが、「仏に眉毛があったかな?」などと周囲から声がかかったりする。さてさて、どんなお守りさんが送られてくるか?

 尾道水道なるものは、船に乗ったかと思うと5分もしない内に向島へ。この桟橋へ向かう道中が、思ったより勾配があって、足下に注目しながらの移動。雨だったら大変だった。
 ユニスは階段の手前ではしっかり止まり、昇るときには前足を一つ上の段におく。それでも階段の幅が不規則になっているような所では、やはり介助者のアドバイスも必要となる。サポートしている学生たちの真剣な声があちこちから聞こえてくる。下見をして、どのように言ったらよいかなど考えあったことだろう。
 盲導犬たちは、出会った当初こそお互い反応したが、行列になって歩き出すと前後の犬にはほとんど感心をしめすことなく、「お仕事中」の誘導に専念していた。
posted by よろてん at 17:12| 京都 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月14日

盲導犬ハピネスの納骨

 ユニスの前のパートナー、盲導犬ハピネスは昨年の9月に亡くなりました。
 そのハピネスの納骨をリタイアボランティアをしてくださっていたAさんご一家、訓練センター担当職員とともに、訓練センターにおいて行っていただきました。
 先先代の盲導犬エドが亡くなったときには納骨堂というのが訓練センター内にできたばかりでしたが、そこに納骨してもらった記憶があります。
 今回のハピネスの場合は、過去に盲導犬事業に関係した犬たちのお骨が整然と並んでいるお部屋があり、お線香を立てて拝ませてもらえる所もありました。
 Aさんがお参りされた後に私も10年一緒に歩いてくれたハピネスに「ありがとう!」と呼びかけ、ハピネスの子犬のやんちゃざかりまた、死を直前にした大変なときにも、ご一家の皆さんで暖かく見守ってくださったAさんご家族に心からの感謝を、また、職員をはじめハピネスの誕生から最後までにいろんな形で支え関わってくださった人たちにお礼の気持ち一杯で手を合わせました。
 この日は盲導犬ユーザーの会の年度始めの総会があって私も参加していました。
 この盲導犬ユーザーの会(ツツジの会)は、ハピネスが我が家に来たのと同時に発足した会で、以後役員としてハピネスがリタイアするまで8年くらいの間年に6・7回、合わせれば50回くらいは訓練センターに足を運んだものでした。
 文字通りハピネスはツツジの会と一緒に歩んで来たとも言えるくらいです。
 そんなツツジの会の総会の日に、ハピネスの納骨!
 犬の命は短くとも、本当に大きな存在でした。ハピネスとともに過ごした時間の中に沢山の思い出があります。そして、Aさんを
はじめ多くの人たちとの出会いの場も作ってくれました。
 「さあお出かけだ!」と言ったら尻尾を思い切り振って喜びを表に出したハピネス。でもお決まりコースの散歩はあまり好きではなかったなあ。
 「美犬でしたよねえ」としみじみおっしゃるAさん。たしかに、電車やバスに乗車すると「可愛い!」という女の子の声があちこちからよく飛び交いました。
 そんなお話をしていると、それまで伏せて待っていたユニスが「まだかよう!」と言わんばかりに鼻を鳴らし出しました。
posted by よろてん at 22:04| 京都 | Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月15日

盲導犬の医療費

 こんにちは、盲導犬ユニスです。
僕の兄弟の盲導犬Uくんが定期チェックのために獣医さんに行ったさいに、歯が一部欠けていて神経が出ているというので歯専門の獣医さんに治療をしてもらったんだって。
そうしたら治療費が10万円ほどかかったそうです。

 僕ら盲導犬は一般の犬と一緒で何時どんな病気にかかるか分からない。
僕は幸にして今まで大きな病気もなく、ヒラリヤの検査やその予防薬・各種予防注射などの他はあまり獣医さんに係ったことはないんだけど先代のハピネスおばさんなどは、関節が悪いというので薬をもらっていたこともあって、医療費をそれなりに払っていたようなことをお父さんから聴いたことがあります。

 盲導犬は盲導犬協会からユーザーに貸与されるんだけど、ドッグフードやフィラリアの薬などは、ユーザーが負担することになっています。
都道府県・市区町村によっては、一部助成をしているような所もあるように聴いていますが、全国的な統一は全くありません。

 犬の医療費に対する保険もあるようですが、
これもユーザー全てが加入するようなものはありません。

 盲導犬のユーザーになるためには、一定の経済的負担を予測しておかないと10年間、一緒に生活するというのが難しい現状です。

 また時間ができたらお父さんが詳しく紹介するかもしれませんが犬の保険のこと、獣医師会や行政のバックアップが今、どのような現状であるのか?

 そうして今後できるだけユーザーに負担がかからず、安心して盲導犬と一緒に歩いてもらえる環境作りをどのようにして整えていけるか?

 僕ら盲導犬も安心して獣医さんにかかれる日が早く来ることを願っています。
posted by よろてん at 15:22| 京都 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月05日

盲導犬ユニスのお正月

DSCF0018.JPG ユニスでーす
今年もよろしくお願いしまあす!

 お正月はお父さんも休み続きで、僕もちょっと常とはリズムが違って、とまどっているところもあるんだけど、それでも今年は天気の良いせいもあってか、お父さんも僕を連れて毎日運動がてらしっかり歩いているので、常よりは沢山歩いています。

 お母さんの実家へ出かけたときも、家から実家まで車に乗らず、僕とお父さんは8千歩歩いて行ったんだよ!

 実家にはラッキーというミニチュアラックスフンドがいるんだけど、僕が行くと小型犬独特の高い声でわんわん歓迎?してくれる!

 僕は最初座敷に上がらず戸を閉めた土間の所で待機するつもりだったのだけど、ラッキーは疲れることもなく、「上がって来て!」とやかましく言い立てるものだから、僕も座敷に上がってお父さんの傍に寝そべらせてもらった
 僕の5分の1くらいしかないラッキーは
興味があるのか僕の傍に来るばかりか、僕の体のあちこちに鼻先を寄せてくんくん嗅ぎまくってくれる!

 最初のころは僕は知らん顔をしていたんだけどとめどなく寄って来るものだから、僕もちょっと「ええかげんにしておけよ!」と軽くうなってやった。

でもラッキーは全く気にしていない。

 かえってお父さんやお母さんが、もしや僕が切れてしまって、ラッキーになにか危害を及ぼさないかと心配しているくらい。

そこで僕を気分転換と外へ出してくれた。

 出て行く僕を羨ましそうに見ていたラッキー、僕が帰って来て先ほどと一緒の場所にダウンしたときは、ちょうどラッキーは別の所へ行っていて、てっきり、まだ僕が外に出ているものと思いこんでいるらしく、外ばかり気にしている!

待っている間はおとなしい。

「ラッキーをおとなしくさせるには、この方法が良いなあ。それにしても犬って鼻が良いというけど、近くにいるのが分からないのかなあ」と僕を隠すように座りなおしながら、
お母さんたちは話してる。

しかし、その時間もものの5分くらい、

ああ見つかってしまった!

こうなると先ほどと一緒!

ラッキーを引き離すと、またあの高い声で止めどなく泣き出す。いいかげんに疲れるかと思いきや、全くその様子もない。
ラッキーのためにもあまり良くなく、僕も落ち着いていられないだろうと、早々に帰らせてもらうことになった。
posted by よろてん at 22:46| 京都 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月26日

盲導犬も歩いた駅伝コース

 12月24日は年末の都大路をかけぬける高校駅伝。
これが終わると、いよいよ今年もカウントダウン、気ぜわしくなる。
 この駅伝、全国的にテレビ・ラジオでも実況放送される。
 京都を知らぬ人たちにとってはどんな所を走っているのだろうかという興味もあるだろう。見えている人は画面を通してだいたいの状況は分かるだろうが、視覚障害の者にとっては想像の域を脱しない。
 私たちの会では、30数年前から視覚障害者と晴眼者が一緒に楽しむレクリエーション活動を企画し、年に数回実施している。
 20年ほど前に、「駅伝コースを歩こう会」を企画し、全国の視覚障害者にも参加を呼びかけたことがある。さあどうかな、と思っていたが関東や北陸から数名の参加希望があった。
 そして当日、朝早く新幹線などを使ってかけつけて来られた人たち含め40名ほどが午前9時過ぎにスタート地点の西京極競技場の前に集まった。
 私も初代盲導犬「エド」と一緒に出発した。
昼食を挿んで21km!ぶっつけ本番だけに期待とみんな大丈夫かな!という主催者側としての心配もちょっと。
 西大路通りに入って上り坂を体験しながら、店前に放置されている自転車の実体を今さらながら腹立たしく感じたり、どこからか美味しそうな臭いが漂って来れば、食べ物の話に花を咲かせながら、わいわいと歩いて金閣寺前。ここからは下り坂がしばらく続いて疲れかけた足もちょっと休まる感じ。それでも
12時半ころには昼食予定地の御所に到着。ここで弁当を広げて一休み。
 秋の日は短い!ゆっくりしているわけにもいかず、そこそこにお尻を上げて歩き出す。このころになると行列はだんだん長くなり、銀閣寺前くらいになると前にも後ろにも仲間の姿はちらほら。白川通りに入るとまた上り坂。常ならハーネスを引っ張るように歩く盲導犬に「スロー!スロー!」と制止の声をかけるのだが、このときばかりは「ちょっと引っ張ってくれるか!」と心の中で念じつつ文
字通り盲導犬に引かれて人よりはちょっと楽ができたかも!
 終着地の国際会館に着くころには秋の夕暮れ、日は傾き足は棒になり「もう1歩も歩きたくない!」という気分。さすが「エド」も道路に敷積もった落ち葉の上にべったり伏せた。
 それでも歩ききったという満足感はあって、この企画その後2・3回はやったような記憶がある。
 参加してくださった視障者の皆さんは今日の実況放送を聞きながら「ああ今あの辺を走っているんだな」と思い起こしておられることだろう。
posted by よろてん at 15:28| 京都 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月26日

盲導犬も歩こう会に参加してきました

 こんにちは!僕盲導犬ユニスでーす。
この前の休みの日、僕とお父さんとお母さんは区民歩こう会に参加して
きました。
 区民歩こう会は毎年、この日に開催されています。
 今回は800人募集しているそうだけど、「今日はちょっと少なめやなあ!」と、お世話係りの人たちが話し合っておられました。
先代のハピネスおばさんは、これに2度参加したそうだけど、僕は初めての参加です。
 お父さんは、日頃の運動不足や血圧にも良いし、盲導犬や視覚障害者を知ってもらう啓発の一助にもなるのではないかと歩こう会に応募しています。

 さて、出発です。
 集団はゆっくりと歩き始めました。集まっておられる人の年齢層はほとんどが熟年層。
 最初は列に合わせてゆっくり歩いていたんだけど、途中からは一組抜き二組抜き。
周囲の人たちも目では僕らを追っているんだろうけど、「盲導犬ですか?」などと興味ぶかそうに問いかけて来る人は、お父さんによると少なくなったとか。
それでも「立派な犬やなあ!」とか「賢そな顔してるは!」などとお連れと話し合っている声はちらほら聞こえてきます。
 昨日の天気予報では雨と言っていたんだけど空は曇り空。傘や僕のレインコートがお荷物になってしまいそうです。
 鴨川の河川敷に出ると水辺に鴨の姿やアルトサックスを練習する音色も聞こえてきます。
 無事6kmを歩いて終着点へ。「ごくろうさん!わんちゃんの分もジュースあげよか!」と労ってもらって。どんな味がするか本当は欲しかったところだけど。
 この後、お父さん・お母さんは昼食を取る都合などもあって元来た方向へ再び歩き出しました。
 昼食を取った後は、2時間くらい後にあるコンサートへ出かけるための時間調整として植物園に入りました。
 道路には落ち葉が一杯、葉っぱ踏み踏み!ゆっくりと秋を感じながら!
 コンサートホールでは「第6回命輝け京都第9コンサート」が開催されており、400人の合唱団が日頃の練習の成果を出すべく一所懸命歌っておられました。
僕は狭い座席下で2時間ちょっと縮まっていました。
 コンサートが終わってからも数10分歩いて、結局お父さんの持っている歩数計は「2万5千なになに」と数字を読み上げていました。12・3km歩いたようです。
 若い僕はへいきだけどお父さん・お母さんはどうだったかな?お疲れさまでした。



posted by よろてん at 23:30| 京都 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月15日

盲導犬もいろいろ

こんにちは!
僕、盲導犬ユニスです。
 昼休み、お天気だと窓際でひなたぼっこをするのが楽しい季節となってきました。

 この前の休みの日に、僕たち同じ出身協会の盲導犬使用者の会の研修・交流会で、名古屋にある盲導犬協会を見学してきました。
 ここは凄い!立派な建物でした。
そして、お父さんは「両手持ち」なるものを体験させてもらいました。
 この「両手持ち」というのは、右手でも左手でもハーネスを持って歩けるということです。
 一般的に盲導犬は使用者の左側に寄り添って歩くのですが、時と場合によって右側にも寄り添って歩くというものです。
 実は、僕もこの「両手持ち」なるものをちょっと経験しています。
 お父さんは、3頭目の盲導犬を貸与してもらう前に、「自宅周辺の環境を考えて、「両手持ちができる盲導犬を可能であれば準備してもらいたい」と訓練センターに申し出ていたのです。
 そして、その初仕事を果たし得るのはどの犬か?ということになり、そこで僕が選ばれたのです。
 でも協会としてもテストケースでもあり、
当初、お父さんと僕が出かけるときは、どうしても右手でハーネスを持つ必要がある箇所だけという条件付きで出発したのです。
となると、やっぱり左に寄り添って歩く場面が多くなりました。
また、右手ハーネス持ちとなるとお父さんの足取りもなんとなく不安定。
そんなこともあって数ヶ月後には右に寄り添うことはできなくなっています。

 その点、さすが両手持ちの訓練を受けているだけのことはあって、体験歩行に協力してくれた犬たちは10分足らずではありましたがお父さんの指示にって横断歩道を渡ってすたすたと歩いていたそうです。

 各協会によってそれぞれの方針、訓練のやり方も違うようで、僕たちは「グッドグッド!」といって誉められるのですが、こちらの犬たちは「よしよし!」といって誉めてもらうそうです。
僕らの命令後はほとんど英語ですが彼らの命令後は日本語だそうです。

 また東京にある協会では「シェア」と指示されたら顎を椅子の上に置いたり「ドア」と言ったら鼻先をノブに付けるように訓練されているそうです。

 そんな体験や話を聞いて帰ってきたお父さん!
またまた僕を右の方へ寄せようとしたり、ノブに鼻先を付けるようなことを言ってみているんです。
本気で根気よく学習させたら僕もその気になるかも!
posted by よろてん at 11:02| 京都 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月20日

先代盲導犬ハピネス逝く

 休日の朝、リタイアボランティアのAさんから「ハピネスが午前4時に亡くなりました。」との連絡をいただきました。

 昨夜はご家族で焼き肉をされ、ハピネスも便乗して食べたとのこと。
しかし、常とはちょっと変わった行動が見られたため、娘さんがハピネスの傍で休み、昼夜見守ってくださる中、夜明けに息を引き取ったとのことでした。

 Aさんの車で訓練センターに到着したハピネスの表情は穏やかで、手に触れる頭や背の毛並みの感触は1週間前のそれと同じもので、今にも頭をもたげてきそうな気さえします。

 Aさんご一家(ハピネスの遊び友達の愛犬メイちゃんも一緒)と訓練センターの職員さんたち、それに我々とユニスに見守られてハピネスは静かに旅だって行きました。

 この日が休日でなく、また外せない予定が入っているような時であったなら…。
こうしてみんなで見送ることはできなかったのではないか、
きっとそうしたことまで考えてこの日までがんばってくれたのではないか、
生前のハピネスを思うと、そんなふうに考えずにはいられませんでした。

 ハピネスは文字通り幸せな14年7ヶ月だったと想います。
私との10年間の時間の中で、言いたかったこともあったでしょう!

それを聞き取ってやれずに終わってしまったこともあるでしょう!

 でも、外出時の嬉しさを体一杯で表し、特に改札口を通るときの「何処へ行くのかな!」と期待感一杯に尻尾をおもいっきり振った、
あの姿を思い出すとき、きっと「楽しかった!」とハピネスも言ってくれていると…

 なによりも、リタイアしてから小犬時代に育ててくださったAさんの所で老後を送ることができたことはハピネスにとって幸せでした。

 そして、腫瘍の告知を受けてからも「自然体で見届けてやりたい!」とのAさんのご意向により、好きな物を食べさせてもらい自由に毎日を過ごし、苦しむ時間も短く健康な時とさほど変わらぬ姿そのままで安らかに眠ったのです。

 ハピネスの一生は、Aさんや訓練センターの職員さんはじめ、多くの人たちの暖かな心に支えられてきたのです。

 またそれは、ハピネスの力を借りて私が自由に行動できることを保障してくださったことにも繋がるのです。

 関係者の皆様には心より御礼申し上げます。

 そして、ハピネス!ほんとうにほんとうにありがとう!
posted by よろてん at 23:24| 京都 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月12日

先代盲導犬ハピネスを見舞う


 梅雨明け間近のころ。
 先代の盲導犬ハピネスを預かってくださっている、リタイアボランティアのAさんから、
「ハピネスも内蔵に腫瘍ができたようで、大部弱ってきています。一度連れて行きますね」と連絡があり、後日、ご夫婦でハピネスを家まで連れてきてくださいました。
たしかに、ハピネスの腹部が膨満し、足腰も弱っていました。

 それから2ヶ月近く。
この夏、ハピネスはどうしていただろうか?
気になっていたので、Aさんの所へ電話させてもらいました。
「やはりだいぶ弱ってきてはいるけれど、
家の中ではなんとか歩こうとしていますよ」と伺ってちょっと安心。

 しかし、その数日後、今度はAさんから電話があって、
「舌の動きが悪くなり、食欲も落ちてきています。排泄も所定の位置でしなければという意識は強くあるけれど、歩くことができず、やむなく寝たままで出すようになってきました」と。

 Aさんも私も急にめったなことはなかろうとは思いつつ、早速Aさん宅におじゃましてハピネスを見舞ってきました。

 ハピネスは、我々か訪問しても起きあがって来ることはなく、横向けに寝そべったまま頭だけもたげて尻尾を振ってくれました。
「どこか苦しい所があるかもしれないけれど、何にも言わずおとなしくしています。
それがかえってかわいそうなくらい」とAさん。

 「訓練センターからも『何でも食べさせて』と言われているので、この頃はお刺身なども食べさせているんですよ。」
私たちがシュークリームをいただいているときも、ハピネスも同じように食べさせてもらっていました。

 「手術ということも考えられないことはありませんが、こうして好きなものを食べさせて、自然体で見守ってやりたいと思っているんですよ」とのAさんご家族のお考えに、
私たちもうなずくばかりでした。

 私鉄の駅からご自宅まで送迎にきてくれたご姉妹も、「誰かいないと心配なので」と、お母さんの外出時には、出かけるのを控えて留守番をしてくれているとのこと。

 このように、ご家族みんなが一丸となって関わって下さっているからこそ、ハピネスをはじめ盲導犬の老後はしっかり守られているのです。

 ハピネス、元気でね!

 でもね、最後まで我慢してがんばることはないよ!

 現役のときには食べられなかったおいしいものをいただいてご家族の愛情を一杯にいただいて、ハピネスは名前そのままに幸せな老後だね!

 Aさんご家族の皆様に感謝一杯の気持ちで帰途につきました。
posted by よろてん at 20:57| 京都 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月08日

盲導犬と飛騨へ その5 (体幹で感じる観光)


 翌朝、朝食は座敷でバイキングと聞いていましたのであえてユニスを伴って行くこともないだろうと、部屋に待たせておいて、家人と大広間に向かいかけました。
すると「ご準備していますのでどうぞ」と係りの人が声をかけて来られて、昨夜私たちが使った部屋へ案内してくれたのです。
この配慮にはちょっととまどいの気持ちも働きました。
バイキングで食べるものをわざわざ準備してくださったご行為には感謝するものの、他の泊まり客と全く接触のできなかった物足りなさも感じざるをえませんでした。

 夕べの天気予報では「雨が降らなきゃ?いいが」と願うばかりでしたが、一夜明けての空は青空。
1100mの高山にいるとは思えぬ残暑。
さて、限られた時間の中で何処を観光しようか!
まず、宿の車で平湯大滝公園の駐車場まで送ってもらいました。
そこから登りの歩行道を大滝目指して歩き始めました
パンフによればかなり厳しい道のように書いてありましたが、ユニスの誘導に任せて歩いていると、ほどなく滝の前に到着!

滝しぶきを感じる所まで接近したかったのですが、以前に事故でもあったのか「進入禁止」の立て札があって、幅6m、落差64mの滝の落ちる音をしばし聴くに止まりました。

この公園には車で来られる人が多いこともあってか、幾組もペットの犬を連れた人たちと合いました。
犬種によってはユニスもちょっと気を引かれかけもしましたが、おおむね盲導犬としての毅然とした振る舞いで観光客にお褒めの言葉をかけてもらっていました。
それにしてもインターネットで見れば「ペットお断り!」とあるのに犬の多かったこと!

次の目的地鍾乳洞へ行くために、バスを待つ時間。公園のベンチに腰掛けて、旅先でのさわやかな空気と地で取れたお日様一杯の
「町よりは安い!」新鮮なトマトをほおばりながら、一時のリラックスタイムを過ごしました。

さあ飛騨大鍾乳洞につきました。
日本の観光鍾乳洞のなかで、最も標高が高い所にある鍾乳洞でありながら、かつては海の底だったそうです。
鍾乳洞は冬は8度、夏でも12度。1歩その中に入ると別世界のような涼しさです。
「触れないでください」と書いてある岩肌でしたが、視障者得意の触覚を生かして、やんわり貴重な保存物を見させてもらいました。
飛騨大鍾乳洞の特徴はストロー状の繊細で白くて美しい鍾乳石です。
細い通路、足場はアップダウンが続きユニスも慎重な誘導ぶりでした。
極端に角度のついた階段の所ではユニスは頑として足を向けず「こんな危ないところはやめておこう」と不服従の構えを取りました。
岩肌からぽたぽた垂れる水滴、まさに体幹で感じることのできる観光でした。

短い時間の旅行は終わりました。
帰路の電車は4時間近く座りっぱなし、数日後の腰痛はこのせいかも?しかしユニスはその狭い足下で自由のさほどきかぬ姿勢で小さく丸まっていた訳で、よくエコノミック症候群をきたさなかったものです。

ユニスくんお疲れ様!

posted by よろてん at 22:51| 京都 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月02日

盲導犬と飛騨へ その4 (食事)

  宿それぞれにいろんな試みをしているのだなあと感じさせるものがあります。
この宿では、部屋ごとに食事を取る場所が別に設けられており、「なになに様どうぞ」と順番に案内していくのです。

 私どもの順番も回ってきてユニスともどもその部屋に案内されました。6畳ほどの座敷の上にテーブルがおいてあり食事は腰掛けて取るのです。

 その座敷に上がりかけて驚きました。なんと、ここにもユニス用のシートがちゃんと用意してあるのです。これにはちょっと驚きました。

テーブルの上には、この地で取れた食材を使ったごちそうが所せましとばかりに並んでいます。視覚障害者の場合、限られたスペース内に沢山の食器が並ぶと、それなりに気を使うものです。
 まずは不用意に手がふれて下に落としてしまわないこと。よくやるのが、背の高いグラスに触れて液体をこぼしてしまうことです。
 付け汁をつけて食べる物も、手元にその食器を配置転換してやらないと食べにくいこともあります。

 私のように、箸裁きが今一の者は、ついつい左の手が応援に出ます。そうした点からすると、こうして個別で食べられるのは気楽な面もあります。
 数年前出かけたツアー旅行先で、昼食時に座敷に上がって食べることがありました。
このときは盲導犬は連れていっていません。
ツアー旅行の場合、盲導犬と一緒に出かけるというのは、それなりのエネルギーがいります。今は、補助犬法も成立し、世の中の受け入れもそれなりに変わりつつありますので、
今度機会があれば盲導犬同伴でツアーにチャレンジしてみようかとも考えています。

 その昼食のテーブルにもしっかり器が並んでいました。ツアー集団は、向かい合わせに座って食べ始めました。家人は私の横にいてそれなりのサポートをしてくれていたのですが、一瞬のこと。「それは私のです」と私の向かいに座っている方から小さく声がでました。
やってしまった!自分の領分と思い、ついつい向かいの方の領分である器へ箸をのばしてしまっていたのです。



posted by よろてん at 21:21| 京都 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月29日

盲導犬と飛騨へ その3(露天風呂)

温泉地での楽しみの一つに露天風呂でゆっくりリラックスというのがあります。
 今回予約したこの宿には二つの家族向け露天風呂があり、私たちが宿を選ぶさいの要因となりました。

 視覚障害者の場合、一人旅に慣れた人は大浴場や露天風呂を使われているようですが、私などはなかなかそこまでの踏ん切りがつかず、自室にある狭いバスを使って済ませていることもしばしばです。

 数年前、上高地へ出かけたさい、思い切ってホテルの人に風呂場への誘導をお願いし、手をとって蛇口の位置なども教えてもらいました。
 そう大きくない風呂場で入浴中の人も一人・二人、湯船から上がり蛇口の方へ向かうと「もう少し右ですよ」と声をかけてくださったりして、湯上がりのさっぱりした気分プラスアルファーを感じたものでした。
 でも事情さえ許せばやっぱり風呂ぐらいは緊張せずゆったり入りたい!

 ユニスをベッドの足にリードで一応繋いで、「待っててね」と声をかけて部屋を出ました。両風呂場とも先客がいたので待つことしばし。
 露天風呂には檜葉の木で作った木製の浴槽と岩石で組まれた浴槽の二つがあって、それぞれの肌触りを感じることができました。
 高山では降っていた雨もなんとか上がって、自然の中で手足を伸ばしているという開放感に浸ることができました。

 ユニスをチェックインしたばかりの部屋に待たせていたので多少心配して部屋にとって返したのですが、「帰ってきたのか」と喜んで尻尾は振って歓迎してくれましたが、特にどうということはなく落ち着いて待ってくれていた様子でした。





posted by よろてん at 09:41| 京都 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月24日

盲導犬と飛騨へ その2(宿舎側の対応)

 平湯温泉郷の中でどの宿に
宿泊しようか?
ガイドブックを頼りに調べた結果、飛騨牛を食べさせるのが売りで、各室に露天風呂があるというホテルに予約を申し出ました。
 このさい、盲導犬同伴であるということは、補助犬法もあり、特に申し出る義務はないのですが、まだまだ理解されていない現状であることから、今回もその旨を伝えました。
 「補助犬法があることも知っていますし、盲導犬は普通の犬とは違うことは分かりますが廊下も全て絨毯を敷いてありますし…」などと歯切れがよくありません。
 なにも恩に着せられてまで利用することはないと、その段階で予約をせずに
電話を切りました。
 そして、「どうぞ!」と快く引き受けてくれた上宝という宿に予約の申し込みをし、高山からバスに乗ってその宿に夕刻到着しました。
 通された部屋に入るなりびっくりしました。洋室部分と和室部分があり、その
それぞれに犬用のシートが敷いてあるのです。トレーの上に敷いてあることから
みると、ここで排尿もさせられるということのようです。
 「何方か以前に盲導犬使用者が利用されたことがあるのですか?」と思わず問い
かけていました。
「はい」という返答に納得するやら
しかしここまでの準備をホテルが自主的にしてくださったのか、宿泊した盲導犬使用者が具体的にこうした方が良いという助言なり申し出をしたのか、興味のあるところでしたが、到着早々でもあり、根ほり葉ほりの質問は控えました。
 我々の部屋の近くに非常口があって、
そのドアを開けると犬の排泄にはもって
こいの空き地があります。
排尿は失敬して袋をつけずに直接そこでさせ、便は、袋をつけてその中にさせて、その内容物は部屋の中の水洗便器で流しまし
た。
敷地で失敬したこと、水洗便器で犬の便を流したことなどをホテル側に逐一報告
する方が良いのではないかと考える盲導犬使用者さんもおられます。
空き地に排尿させたことは一応ホテルに言っておいた方が良かったかも?
 室内では、持参した敷物も使わず、せっかく準備してくださった敷物の上にも
乗らず、結果的にはユニスは、レインコートから着替えたダスターコートを着て
絨毯の上に直接ウエイトすることとなりました。
 ホテル側のご厚意は有り難く受け止めた上で、盲導犬使用者としては、そのご行為を使うか使わないかは選択肢の一つとして選ばさせていただきました。


posted by よろてん at 00:08| 京都 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月19日

盲導犬と飛騨へ その1(陣屋の理解ある対応)

 僅かな夏期休暇を使ってユニスを伴って
高山・飛騨へ出かけてきました。
 出発の日、台風が九州に接近とあって
天気予報も気になるところ。電車の窓外に
展開する空模様も晴れていたと思えば傘を
さして歩いている人があったりで不安定。
 新幹線の中では、足下に伏せている
ユニスを見て切符を確認にきた乗務員が
「この犬は盲導犬ですか?」などと尋ねる。
こんな問いかけをされるのは初めて!
 乗り換えた電車の後部座席からは小さな
兄弟を連れた若い母親の「じっとして
なさい」というヒステリックな声が何度も
聞こえ、もっと後ろの方からは盛んに鳴く
赤ちゃんの声が聞こえてきます。時節がら
「こうした状況がおうじて虐待にも繋がる
事例もあるのかも」と一人合点する一時も
あったりして。
 ようやく着いた高山駅に降り立つと雨。
改札口を出た所で、持参した犬用の
レインコートをユニスに着せて、小さな
傘をさしてぼったらぼったらと水はけの
あまりよくない町中を歩き出しました。
雨宿りの軒下では、「昨日は乗鞍の
ご来光が感動的に観賞できましたよ」と
旅行者の話。運がなかったと気を
取り直してまた歩き出します。
 ユニスもぐっしょり濡れてしまいました。
 やれやれ、陣屋に着きました。ここは
靴を脱いで見学となっています。さて
ユニスをどうしたものかと考える暇もなく
「どうぞ盲導犬も一緒に上がって
ください」と係りの人から声がかかります。
座敷に上げることは何となく躊躇して
しまいがちになる私。しかもユニスの
レインコートからは雨の滴が落ちて
きそうです。
「何処かで預かっておいてもらえても」と
言いつつもやはり不特定多数が訪れる
所での管理上の心配もあります。迷って
いる手に「これで足を拭いてやって」と
タオルを貸してくれます。それでは、と
ユニスも一緒に見学者に混じって部屋の
中を歩き出します。
 こうした所ではほとんど手に触れられる
ものはありません。ちょうヌガイド者が
いて、その案内を聞きながら進んで
いきます。手に触れることができたのは
「こけら」という板で作った屋根の
模型のみです。後で調べてみたら、陣屋の
一つの特徴はこの屋根の構造にあるという
ことですので実際に出向いて見られた
ことはそれなりの見学になったのかも?
一緒に見学しておられた人たちにも
ユニスは受け入れてもらえて見学は無事に
終わりました。
 雨の高山でしたが陣屋での理解ある
対応は心に残りました。

posted by よろてん at 17:01| 京都 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 盲導犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする