某信用金庫がお客様サービスの一環として毎年行っているいで湯の旅への小旅行に、今年はじめて家人とユニスとともに参加する。
二日前から雪降り、そんな天気が、串本へ出かける早朝に持ち越し。しかし、バスが南へ向かうにしたがい、窓から差し込む日差しもきついくらいになる。
このツアーを申し込むさい、盲導犬を伴うということで、ご多分に洩れず、主催者側と色々なやり取りがあって当日となる。
バスツアーの参加者が多かったこともあり、座席数の多い観光バスが使われたために、ユニスが伏せる足下はちょっと窮屈目。ユニスのエコノミック症候群防止のためにもトイレタイムごとに下車する。参加者の中では最も前の席に座らせてもらったので乗り降りは容易にできた。
今回の旅行は食べることと買い物が中心で観光で立ち寄る所は少なかった。そうしたなかで、立ち寄った海中公園にはきれいな色の魚が沢山泳いでいたようだが、こうした水族館のような所は、視障者にとってはさわって見るものもなく、他者の目で見たものを言葉として表現してもらい、それを自分なりに感じ取ることになる。
宿泊するホテルには早めに到着。
割り振りされたルームへ入るなり、家人に外は海か?」と聞く。「山側で、見晴らしが良いとは言えない」という。リゾートホテルとあれば外の景色も値段の内。ちょっと気になるところ。今回、誘い合わせて一緒に来たTさん親子の部屋は?と、聞くと「海の見える見晴らしの良いお部屋」という。
我々の部屋は、一通り見てみると、車椅子使用ができる、いわゆる身障者用の部屋。トイレや洗面所に入る所は引き戸になっており、床はフラットになっている。洗面所の下は空間になって車椅子がつっこめるようになっており、風呂場もユニットバスよりは広くあちらこちらに手すりがついている。ツインのベッドの間もゆとりがあり車椅子で移動しやすいようになっている。
見た目、スペース的には移動しやすそうであるが、実際に車椅子使用者が移動するさいに、その配置場所や高さなどはどうだろう。特に腰掛ける高さや手すりの位置などは微妙に違うだけで、その利用度がうんと変わってしまう。便座には点字表示もあったが、その文字が小さいこと、利用するさいに右手で判断せねばならず、もともと左手読みが得手であり、しかもここ数ヶ月は指先の感覚が鈍っていることもあって、なかなか読みとることができない。
部屋の割り振りのさい、主催者は、盲導犬使用者であることはホテルに告げていると思うが、どういう基準で部屋選びをしているかが知りたいところである。視覚障害者ということで、車椅子使用とも同じ「身障者」というくくりの中から決まったことだろうか?
そして、車椅子使用者の利用は少ないというところから、窓外の風景も優先されなくなって、こうした部屋配置になったのだろうか。
我々への気遣いはそれなりにありがたいこともある。しかしながら、一方的に決めつけてしまわないで、利用する側の声も聞いた上で結論を出してもらえると嬉しいものだ。
今回の場合、室内移動は、一定の広さがあり、配置もシンプルだったので一人で移動するには便利であったし、風呂も大きめであったので使ってもみた。そういう意味では、「ここで良かった」ともいえるが、見えない者と一緒の同室者は窓外の風景を楽しみにしていることも考えられる。