盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (4)
目の代わり
バス停やポストなど「面」上に有るものを探すのも盲導犬にとっては大切な
作業だが、視覚障がい者としてやって欲しいことがある。それは落とした物を拾
って見えない者に渡してもらうこと。
盲導犬と一緒に歩くとき、できるだけ左の道端によって歩くようにしている。
一定の高さまでの障害物については犬が避けてくれるが、路上駐車している大型
の車のミラーや垣根越しに突き出した枝葉までは目が届かず、ようしゃなく顔面
を直撃する。それで外出時は前つばのしっかりした帽子と眼鏡を着用するように
している。ところがうっかり木の枝に眼鏡がひっかかり路上に飛んでしまったり、
犬のブラッシング中にブラシがうっかり手から離れてしまったことや、囲碁をや
っていて碁石が床に転がってしまったことなど、そのつど「拾う」ということの
難儀さを思い知らされる。
「目の代わり」として盲導犬に「拾う」という作業を習得してもらえたらどん
なに助かるか!聴覚や下肢の障害のある者への介助犬が活躍しているが、視覚障
がい者にとっても介助犬的な役割を果たすことで盲導犬の存在はなおのこと高ま
るだろう。
共同訓練の中で、この作業ができるよう訓練士に申し出たことはある。うまく
できそうな気配もあったが、結果として実用化にはいたっていない。
この「拾う」というプロセスの中で、見逃してはいけないことは、単に拾うと
いうことで終わらず、その目的物を視覚障がい者の掌の上に乗せるということが
重要である。同様に、「カム!」と呼び寄せたとき、視覚障がい者の身体にしっ
かり触れるように接近すること。近くまできていても、そのあたりをうろうろし
ているだけでは来たことに気づかず何度も呼ぶようなことにもなる。「近くにい
る」という距離感ではなく「触覚」による確認が必要。
盲導犬になる犬には子犬のうちから視覚障がい者への関わり方を日常の中で学
習させておいてもらいたい。呼んだら体当たりするくらいに接してくる。ボール
遊びなどしたときも、必ず手元にもってくる。こうした楽しみながら学習したこ
とがその後の視覚障がい者との生活の中で生かされてくる。
移動のサポートプラス「目を提供する視覚障がい者介助犬」としてグレードア
ップすることで、使用者が増えていくことを期待している。