盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (3)
視覚障がい者個々それぞれのニーズにそった対応を
視覚障がい者といっても見え方・生活のパ ターンなどから盲導犬使用者と
してのニーズも様々である。
5回の共同訓練を終え実際に37年間、盲導犬との行動を通して感じたこと。
以下は、今後のトレーニングの在り方についての私見である。
基本トレーニング(線と点)が終わった段階で、候補ユーザーとなるべき視覚
障がい者とのペアを設定し、その視覚障がい者の生活・行動基盤に基づいたプラ
ンをユーザー・担当訓練士間で計画し、まずは担当訓練士の下、盲導犬に一定程
度の学習をさせた上で、その目的を達成できそうなことを踏まえた上で、ユーザ
ーとなるべき視覚障がい者との共同訓練を開始。各項目についてユーザー・盲導
犬ペアにおいて各項目がクリアできたかを確認して、全てをクリアできた段階で
最終ゴールとする。
この工程は、「与えられる犬」から「コンシューマー」(使い手モデル)の考
えである。
私のばあいは、横断歩道を渡るときは原則として点字ブロック(点ブロック)
の上に立ちたい。以前横断歩道の白線を目安にトレーニングされた犬と訓練に入
って、犬は横断歩道をチェックしていてもブロック状でなかったので横断歩道を
見過ごしたということがあった。在住地域によって必ずしもブロックが何処にも
敷設されていないところもあり、白線を目安としたチェックを求めるユーザーも
出て来るかもしれない。エレベータを使うユーザーもあろうが私の場合は見える
同行者がいない場合はエレベータを使わず階段やエスカレーターを使う。駅の改
札口を通るときも私の場合は、身障手帳を有人改札口で見せるが、ICカードを使
っている人の場合は、その改札口へ誘導することを求めるだろう。
犬にとっても基本学習の中で将来使わないであろうテーマを一定時間教え込ま
れるよりも必須であるべきテーマに重点をおいて教えてもらった方が効果的であ
る。途中で違う事柄を導入されることで混乱するケースは多く体験してきたとこ
ろである。
盲導犬歩行において、「寄る」 「止まる」 「方向を変える」という動的な
要素の他に、盲導犬には「目の提供」も期待している。
点字ブロックや改札口・エスカレーターの場所などへの誘導。電車・バスなど
に乗車したさいの空席チェックなど。これらは身近におられる人の声掛けがあれ
ば解決することではあるが。
訓練を終えてユーザー(視覚障がい者)が盲導犬とともに生活圏で行動し始め
たとき、不慣れからくる細かなトラブルはいろいろ生じてくる。慣れるまでは安
心とまではいかぬまでも安全を確保できることは必須である。そのためにも盲導
犬に託せることとユーザーがしっかり管理していくべきことを見極めていかねば
ならない。