2020年01月11日

京都国立近代美術館から、視覚障がい来館者に対する対応についての回答

昨秋、美術館の視覚障がい者に対する関わり方について、問い合わせた回答がい
ただけていないとの内容をこのブログに書いたが、手違いで見ておられなかった
とのことで、改めてご回答をいただいたので紹介する。


当館の現状の対応について、ご回答させていただきます。

現状では、視覚障害のある方がいらっしゃった場合、言葉による作品鑑賞をス
タッフがご一緒するというかたちで対応をさせていただいています。
見えない方が、触ることによって主体的に情報を得ていただけるというのは、
我々もこれまでの取り組みでお会いした視覚障害のある方から教えていただいて

おります。ただ、美術館は作品を保存し後世に同じ状態で伝えていくという使命

も持っている社会施設です。そして当館は、(見える・見えないにかかわらず)

来場者の方がさわって鑑賞することを前提とした作品というものを、これまで、

収蔵したことがありませんでした。
ですが、「誰もが楽しめる美術館にする」という思いのもとで2017年から「感覚

をひらく」というプロジェクトをスタートしまして、イベントという単発の取組

みではありますが、本物の所蔵作品をさわってもらう機会を設け始めました。
その準備の段階で、「安全にさわることができて、触ることでより一層理解が深

まる作品はどれか」という観点から、収蔵品を別の角度からとらえてみるとい
う、新しい視点を学芸課スタッフの間で持つようになってきています。「これは

大丈夫」と学芸課内で判断がなされた作品については、イベントの中で自由にさ

わって体験していただいています。このプロセスを今後も続けていくことで、
触って体験していただける作品が増え、また、そうした作品に対するケアの仕方

や来場者の方のナビゲートの仕方についても、我々のなかでノウハウが徐々に蓄

積されていくものと感じております。
ここからは美術館としてではなく個人的な意見ですが、将来的には、常設的にさ

わることができる作品が展示されていて、要請に応じて専門のスタッフが対応す

るという状況になれば理想的だなと思い、プロジェクトに携わっています。

また音声ガイドについてですが、当館は、企画展と常設展で、5〜10作品につ

いて、音声ガイドを毎回作成しております。文章は当館の学芸スタッフが執筆し

ています。
企画展の場合は、会場内で音声ガイドの機器を有料で貸し出しています。聴覚障

害のある方には、文字に起こしたものをお貸出しできることもございます。
また常設展では、スマートフォンのアプリで「カタログポケット」というものを

導入しており、こちらをダウンロードいただくと会場だけでなくご自宅でも、作

品解説が自動音声でお聞きいただくことができます。ただ、こちらの「カタログ

ポケット」、視覚障害のある方には操作が複雑で難しいようでして、まだまだ改

善の必要があるなと私どもも感じているところです。
また一般的に音声ガイドは、視覚で作品を見ている方にむけて付属的に情報を伝

えるツールという前提のもと、文章が書かれています。そのため「視覚障害のあ

る方が楽しめる音声ガイド」という観点からみれば、不親切で不十分な表現が
多々あるように感じております。見える・見えないにかかわらず楽しめ、想像が

膨らむような、ユニバーサルな音声ガイド、あると良いですね。


ここまで。


心強いご回答をいただいて、今後の取り組みに期待したい。
posted by よろてん at 10:52| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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