他府県から入洛される視覚障がい者を「目の提供」によってサポートするアイ
ヘルパー
活動を続けているが、数か月前、「毎週、決まった場所への手引きしてもらえな
いか」という依頼が窓口受付にあった。数回関わることによって、その後は独り
歩きしてもらえるものと考えて引き受けることにした。
初回の待ち合わせ場所には母親と本人が現れた。成人になったとはいえ、ほとん
ど家人の手引きばかりで行動してきたという。当初考えたこととはいささか異な
るが、とにかく「独り歩き」が可能になるかどうか、一定回数アイヘルパーが代
わりあって関わることにした。見えている者であれば15分程度で歩ける距離で
ある。
アイヘルパーには「独り歩き」ができやすいルートを選んで欲しい旨伝えてお
いた。アイヘルパーからは、「もっとも歩く距離が短いルート」が提案され、そ
れで数回の活動を終えた。しかし、独り歩きの兆しは報告からは感じ取れなかっ
た。
そこで、私自身で盲導犬と一緒に、そのコースを歩いてみることにした。
幾つか問題点はあったが、もっとも危険を感じさせたのは車が常時通らない交差
点があることだ。車の流れが途絶えないところであれば、横断歩道の手前で車が
止まったことを確認して横断歩道を渡ることができる。しかし、ときどき車が通
るところでは、その判断ができない。そこで音の信号機があり、点字ブロックが
敷設されたルートがないか他の道を探してみた。短距離がもっとも効率的と考え
る晴眼者と耳からの情報や足裏の感覚を頼り
にする視覚障がい者との価値観の違いの一例である。
ルートを変えてサポートを続けたが、やはり基本ができていない。「きちんと
歩行訓練を受けられた方が良い」と伝えた。しかし、「新たな環境下の中で資格
を取るための勉強を始めたばかりであり、まずは、そちらの方に力を注ぎたい」
と親御さんの申し出がある。
ユニーズ例会の場に依頼者とその親を招いて今後の関わり方について話し合った。
「本会としては、『独り歩き』することを前提に『目の提供』をしているもの
であり、私としては、何よりも生活能力を優先した取り組みをしていくべきでは
ないか。『手引き』状態で関わることは自立にも繋がらないので今後の関わりに
ついては見直していきたい」と述べた。しかし、実際に関わっているアイヘルパ
ーの中からは「依頼者が求めていることを受け止めることが必要」という、いわ
ば「してあげる」ボランティアの気持ちの現れもあった。
そもそも「手引きをしてもらいたい」と申し出たのに、実際に関わってもらうと
「独り歩き」という課題をボランティアの方から提示されてしまい困惑してしま
った、というのが実情のようだった。
ここにいたるまでの時間の中で学校や施設の教諭や職員が関わってきたのに、
どうして「自立」するための基本的な考え方や対処の仕方について助言して来な
かったのだろう。
手伝いをお願いしたところが突如として「自立」という問題を提示されて困惑し
ている。そもそもスタート地点からボタンの掛け違いがあった、と両親のつぶや
き。
それでも、私から強く訴えたこともあって、父親が即刻歩行訓練の手続きをと
り、早速歩行訓練士に対応してもらっている。
今後、両親・本人それぞれが「自立」を課題としてどのように歩んでいかれる
か?
必要に応じて会としても関わりながら経過を見守っていきたい。