数時間後、家人が外出するため準備を始めると、ユニスは2階の私の部屋へ上がろうと階段に前足をかけるが、何処か痛みが走ったのか悲鳴に似た声を2度ほどあげる。
ベッドにダウンしているユニスの手足を屈伸したり、背骨の周囲を軽く押していっても特に痛がる様子はない。「up!」と立つよう促すが動かない。フードを数粒持ってきて少し離れた所へおく。それを目当てに立ち上がりかけたが、やはり痛みがあるのかうずくまってしまう。
獣医へ連れていくにも、家人の骨折後の腕の状態では30kg以上あるユニスを運ぶベッドの片方を持ち上げることもできないし、40分位かかるかかりつけの獣医まで運転するのも容易ではない。
休日でもあり、イベントなどもあって、訓練センター職員の手足らずは分かっており、どうだろう?気になりつつも助っ人を願うしかない。
電話口から「直ぐに誰かを出せるようにします」と対応してもらえる返答をもらえて、まずは一安心。獣医の外来受付は12時までということで遠くからかけつけてくれる職員を待ちつつ「間に会うだろうか」と何度も時計の針に指をやる。
11時を過ぎてからナビを頼りに駆けつけてくれた職員と一緒に、犬のベッドごと車に運んで獣医へ急いでもらう。
レントゲンを撮ってもらっての結果は、「腰骨の4・5間が狭まっていて、これが原因で神経を圧迫して痛みが走るのだろう、大型の老犬では、ある程度宿命的な病状である」との説明。この2月で11歳。盲導犬としての仕事もバトンタッチする寸前のアクシデントである。消炎・鎮痛剤を飲ませるとともに、しばらくレーザー鍼による治療をして、とにかく安静にさせておく必要があるとのこと。となると、数日センターで預かってもらってお世話になるしかない。
ユニスのここ1・2ヶ月の様子を思い出してみると、兆候らしきものがないとはいえない。自宅の階段の昇降、時にためらうことが何度かあった。また、外出時、バスに乗るときにさっさと乗らないので、こちらがハーネスを引っ張るようにしてステップに引き上げたことが数回ある。
毎日の散歩は、もともとあまり好きで無かったこともあり、ゆっくりゆっくり歩くのを「牛歩ならぬユニ歩やなあ!」と笑っていたが、この寒さの中、腰に何となくずしんとした痛みがあったのかもしれない。
やはり10歳を越えた犬に対しては、もっと身体面での変化に心配りしておいた方が良かったことを今更ながら再認識する。
今となっては、ただただ症状が安定して最小限の盲導犬としての働きを終えて穏やかな老後をリタイアボランティアさんのお宅で過ごせることを願うばかりである。