2009年05月09日

     ベッドサイドに立って その7 (最後の季節)

 春。母の入院先の病院は大通りに面した新しい建物へ移転。
 母のベッドも窓際の明るい場所になる。窓からは鳩が舞うのが見える。
 食欲はあるようで、「スコップみたいなスプーンやなあ」と言いながら保温配膳車から出された暖かな豆腐を口に運んでいる。
 ここには、一応リハビリ室のような所もあり、平行棒もあるので車椅子に乗せて立たせてみようと試みるが足が立たない。
 週3回風呂に入れてもらっているということだが、こんな足腰の者を支えて入浴させるのも大変だろうな、と思う。
 母の学生時代からの親友からの手紙が届くが、これをしっかり読む。
 初夏。最近は元気でいつの間にかお粥から後ご飯に変わっている。しかし、それも毎週覗くごとにころころ状態が変わるようになってくる。
 母にとっては結果的に最後の誕生日の日となる。サクランボを持っていったが、カリウム制限ということで3粒ほど口に入れる。
 夏。脳血管障害が発生したらしく言語も定かでなくなってくる。
 病室に入り、「こんにちは」と声をかけると「こんにちは」と一応言葉を返すが、これは自発的というよりも単に復唱しているというだけ。
 手を握らせても指が十分に曲がりきらない。「まがらへん」という言葉を何度も繰り返す。これも一つの症状。
 認知症が進みかけているのだろう。会話として成立しにくくなってきた。
 この状態を受け入れていかねばならないのだろう。今まで握り合った手と手の感触にも力がなくなってきた。その握力の無さよりも、互いの意思の疎通を取り合えなくなってきた空しさを、手の感触の中にも感じてしまう。
 退出するとき、何度か「そしたらさいなら」と声をかけると「さいなら」と一応言葉は返ってくるが、これもオウム返しにすぎないのだろうか?
 秋。意識レベルが下がってきて、こちらから声をかけても反応がないときが多くなる。院長によると「それでも3日に1回くらいは自力で食事をされるときがある」とのこと。
 透析のあった日でも浮腫が目立つ日が増える。痰が貯まることが気になる。急な事態というのが痰が貯まって呼吸困難になるということも想定される。
posted by よろてん at 21:53| 京都 | Comment(0) | TrackBack(1) | ベッドサイドに立って | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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