盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (5)
犬を通して知ることから理解を
白杖を所持していても、街中・バス停・待合場所などで一般市民から声をかけ
られることはあまりない。その点、盲導犬と一緒にいると、多くは犬の話題を通
してではあるが話しかけられることがしばしばある。時と場合、ご近所や会合な
どで顔合わせのある人など、その関わり方によって、盲導犬そのものの話題で終
わることもあるが、できるだけ盲導犬の使用者である視覚障がい者の実情などを
知ってもらえるような話題作りに心掛けている。
盲導犬啓発活動の一つの事例として、歩道に乗り上げて放置されている車があ
る。盲導犬は犬と使用者二人分の幅がないときには、通れないことを見極めてそ
の障害物を避けようとして車道へいったん出てからまた歩道へ戻るようにする。
ここまでの説明で終わると、その内容を聞いた人たちは、「何と盲導犬は賢いな
あ」ということで終わってしまいがちである。
このとき、犬も視覚障がい者も危険な場所へ出なければならない状況を作った
のは誰!という問いかけをすることで、自らのこととしても引き寄せて考えても
らえるような、そうした場になればと願っている。
盲導犬が視覚障がい者と一緒に歩き・生活するためには、多くのボランティア
の皆さんが関わってくださっている。
しかし残念ながら、それらのボランティアさんと使用者である視覚障がい者と
の接点は少ない。それぞれの犬には個々の生活歴があり、飼い主が変わっても過
去の生き方について情報を提供しあっていくことは必要ではないかと考える。盲
導犬事業運営者が双方の連絡を取り合うことに消極的なのはそれなりの理由もあ
るだろう。しかし、そのリスクよりもせっかく盲導犬のボランティアを志してく
ださった人たちには、より積極的に視覚障がい者のことを知ってもらえるチャン
スを提供してもらいたい。
一定の知識をもってもらえることで視覚障がい者と生活する犬との関わり方は
どうすれば良いか?犬とのかかわりを外れても視覚障がい者へのサポートの在り
方など、いろいろ知ってもらうことができるだろう。
環境のゆるすかぎり、盲導犬を介して、情報を共有しあえる場を提供していける
よう事業者には働きかけていってもらいたい。