2021年11月18日

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (2)  面・線・点

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (2)

面・線・点

 晴眼者が「目」からの情報として得るものが「面」であるならば視覚障がい者
が得る情報は「線」であり「点」である。周辺を把握するために耳から得る情報
はある意味「面」ともいえるが、移動においての最終確認は「線と点」である。

 盲導犬の仕事は、側面にそって歩くこと(線)、曲がり角や段差のチェック
(点)、障害物の回避(点)の三つが基本であろう。
 この3点が確実にクリアできれば頭の地図を使えば概ね何処へでも行けると言
っても過言ではないかもしれない。

 5頭の盲導犬との共同訓練を通して感じたことは、「寄り」(線) 「コーナ
ーチェック」(点)の課題を5頭の犬それぞれに一定の条件下では見事にクリア
して「グッド」なのだが、共同訓練を終えて、さてユーザーとの歩行が始まると
環境の変化や指示するタイミングなどもあろうが、その動きがアバウトになって
しまうのも全ての犬について感じている。
 道路沿いに歩いているつもりでも、駐車などがあって、それを避けようと道路
の中央へ出て、そのまま道の真ん中を歩いていたり、角・辻があっても、そこで
止まらず素通りしてしまうことがある。こうなると頭の地図は役立たず、「面」
の状態の中に放り出されてしまったようなもので周囲との距離感覚が分からなく
なり、どの方向を向いているのかも定かでなくなる。早朝の散歩では道路を通る
車量も少なく朝日もまだうっすらとしているようなときなど、耳からの情報や日
差しを感じる触覚などが働かず迷ってしまうことになり、音声方位系(1万円以
上する)のようなものを手掛かりとしなければならなくなる。
 盲導犬は「目の代わり」をしてくれる存在である。しかし、犬自身は、何時も
寄り添っている人が「目の不自由な人」と認識している分けではなかろう。様々
な行動の中で、こうしたときはこのようにすれば褒めてもらえるとか、こんなこ
とをしたら叱られる、という経験の積み重ねが盲導犬としての動きとなっている
のだろう。
 基本中の基本練習。「線」で確実に傍らに寄る、「点」角・辻のチェック。そ
して、「ストレート」真っすぐ渡り切る、十字路やY字路に差し掛かったところ
では、しっかり止まり、「レフト・ゴー」左へ曲がるあるいは左の方の道を行く、
「ライト・ゴー」右へ行く。これらの指示を受けてできうるかぎり正確に言われ
た方向に足を向ける。
新パートナーと歩き始めてしばらくは、訓練を受けた環境でないこともあって、
犬によって差はあるが、ユーザーとしてはかなり苦労する。慣れてくれば、その
犬の得意・不得意も何となく分かってきて対処するが、知らぬ間に歩道から車道
へ出てしまっているなど後から振り返るとひやりとすることもある。
 諸事情もあって難しい点はあろうが、盲導犬になる犬全てに統一してトレーニ
ングすべきは前述の基本。その基本も多様なバリエーションを取り入れてどのユ
ーザーにとっても使用しやすいレベルを目指す。そのためにはトレーニングの半
分くらいは費やしてもらわねばならないだろう。
posted by よろてん at 15:39| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (3)   視覚障がい者個々それぞれのニーズにそった対応を 


盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (3)

視覚障がい者個々それぞれのニーズにそった対応を

 視覚障がい者といっても見え方・生活のパ ターンなどから盲導犬使用者と
してのニーズも様々である。
 5回の共同訓練を終え実際に37年間、盲導犬との行動を通して感じたこと。
以下は、今後のトレーニングの在り方についての私見である。

 基本トレーニング(線と点)が終わった段階で、候補ユーザーとなるべき視覚
障がい者とのペアを設定し、その視覚障がい者の生活・行動基盤に基づいたプラ
ンをユーザー・担当訓練士間で計画し、まずは担当訓練士の下、盲導犬に一定程
度の学習をさせた上で、その目的を達成できそうなことを踏まえた上で、ユーザ
ーとなるべき視覚障がい者との共同訓練を開始。各項目についてユーザー・盲導
犬ペアにおいて各項目がクリアできたかを確認して、全てをクリアできた段階で
最終ゴールとする。
 この工程は、「与えられる犬」から「コンシューマー」(使い手モデル)の考
えである。

 私のばあいは、横断歩道を渡るときは原則として点字ブロック(点ブロック)
の上に立ちたい。以前横断歩道の白線を目安にトレーニングされた犬と訓練に入
って、犬は横断歩道をチェックしていてもブロック状でなかったので横断歩道を
見過ごしたということがあった。在住地域によって必ずしもブロックが何処にも
敷設されていないところもあり、白線を目安としたチェックを求めるユーザーも
出て来るかもしれない。エレベータを使うユーザーもあろうが私の場合は見える
同行者がいない場合はエレベータを使わず階段やエスカレーターを使う。駅の改
札口を通るときも私の場合は、身障手帳を有人改札口で見せるが、ICカードを使
っている人の場合は、その改札口へ誘導することを求めるだろう。
 犬にとっても基本学習の中で将来使わないであろうテーマを一定時間教え込ま
れるよりも必須であるべきテーマに重点をおいて教えてもらった方が効果的であ
る。途中で違う事柄を導入されることで混乱するケースは多く体験してきたとこ
ろである。
 盲導犬歩行において、「寄る」 「止まる」 「方向を変える」という動的な
要素の他に、盲導犬には「目の提供」も期待している。
 点字ブロックや改札口・エスカレーターの場所などへの誘導。電車・バスなど
に乗車したさいの空席チェックなど。これらは身近におられる人の声掛けがあれ
ば解決することではあるが。

 訓練を終えてユーザー(視覚障がい者)が盲導犬とともに生活圏で行動し始め
たとき、不慣れからくる細かなトラブルはいろいろ生じてくる。慣れるまでは安
心とまではいかぬまでも安全を確保できることは必須である。そのためにも盲導
犬に託せることとユーザーがしっかり管理していくべきことを見極めていかねば
ならない。
posted by よろてん at 15:32| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (1)  触地図の効果


盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (1)

 私はあと数年で80歳の大台にのる。
 ここまで4頭の盲導犬と37年間歩いてきた。4頭目の盲導犬も10歳の定年を迎え
ることになった。さてこれからどうするか?今後、何時どのような環境の変化が
生じて盲導犬との生活が困難になることも考えられる。
 そうしたことも踏まえて盲導犬協会に、5頭目の盲導犬貸与について相談した。
結果、ユーザーとして犬を管理できる間は貸与するということになり、それこそ
最後の盲導犬との再出発となった。
 新パートナーの盲導犬は体重22s。これまでの4頭が30kg前後あったこと
からすると二回りほど小さい。盲導犬はユーザーの半分くらいの体重がないと何
らかの事情で踏みとどまらねばならないときのブレーキ役になれないと言われて
きた。ところが最近の盲導犬は総じて小さくなってきているという。乗り物や飲
食店を使うとき、足元に伏せさせておくには小さな方が良いが、実際に行動して
みたらどうだろうか?そうした課題もかかえながら、盲導犬・ユーザーそして盲
導犬歩行訓練士との共同訓練に入った。

触地図の効果
  私がまず訓練士にお願いしたのが触地図である。
日常的に盲導犬と一緒に散歩として使っているルートが7・8箇所ある。歩数で
いえば
4000から8000歩くらい。これらのルートを共同訓練の実施場所とするにあたり、
自分の頭の中にある地図を今一度確認しておくことにした。慣れた盲導犬との移
動では常にユーザーが支持しなくても経験的に盲導犬が「連れていく」というこ
とがある。本来はユーザーの支持にしたがって歩くのが盲導犬歩行。
 触地図というのは、鉄道・バス通り・枝道・川や駅などを指先で触って分かる
よう点や線をザラツキなども変えて作成する。距離感や曲がり具合などをより正
確に表現する。
 幾つかの工程を経て作成してもらったものを見せてもらって感激と驚き!
 これまで真っすぐ歩いていたように思っていたところがかなり曲がっていたり、
横断歩道の白線が引いていなかったところを平気で渡っていたり。全体的な配置
がよく分かる。
 事前に情報を得ておくことで、どのポイントで盲導犬に支持を出したり、より
慎重に歩かねばならない箇所などが確認できる。また、訓練を終えてから触地図
を見ながら具体的に反省点を振り返ることもできた。
 作成は大変な労力であったろう。関わってくださった人たちへ感謝!
posted by よろてん at 15:05| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする