2021年11月26日

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (5) 犬を通して知ることから理解を


盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (5)

犬を通して知ることから理解を

 白杖を所持していても、街中・バス停・待合場所などで一般市民から声をかけ
られることはあまりない。その点、盲導犬と一緒にいると、多くは犬の話題を通
してではあるが話しかけられることがしばしばある。時と場合、ご近所や会合な
どで顔合わせのある人など、その関わり方によって、盲導犬そのものの話題で終
わることもあるが、できるだけ盲導犬の使用者である視覚障がい者の実情などを
知ってもらえるような話題作りに心掛けている。
 盲導犬啓発活動の一つの事例として、歩道に乗り上げて放置されている車があ
る。盲導犬は犬と使用者二人分の幅がないときには、通れないことを見極めてそ
の障害物を避けようとして車道へいったん出てからまた歩道へ戻るようにする。
ここまでの説明で終わると、その内容を聞いた人たちは、「何と盲導犬は賢いな
あ」ということで終わってしまいがちである。
 このとき、犬も視覚障がい者も危険な場所へ出なければならない状況を作った
のは誰!という問いかけをすることで、自らのこととしても引き寄せて考えても
らえるような、そうした場になればと願っている。

 盲導犬が視覚障がい者と一緒に歩き・生活するためには、多くのボランティア
の皆さんが関わってくださっている。
 しかし残念ながら、それらのボランティアさんと使用者である視覚障がい者と
の接点は少ない。それぞれの犬には個々の生活歴があり、飼い主が変わっても過
去の生き方について情報を提供しあっていくことは必要ではないかと考える。盲
導犬事業運営者が双方の連絡を取り合うことに消極的なのはそれなりの理由もあ
るだろう。しかし、そのリスクよりもせっかく盲導犬のボランティアを志してく
ださった人たちには、より積極的に視覚障がい者のことを知ってもらえるチャン
スを提供してもらいたい。
 一定の知識をもってもらえることで視覚障がい者と生活する犬との関わり方は
どうすれば良いか?犬とのかかわりを外れても視覚障がい者へのサポートの在り
方など、いろいろ知ってもらうことができるだろう。
環境のゆるすかぎり、盲導犬を介して、情報を共有しあえる場を提供していける
よう事業者には働きかけていってもらいたい。
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盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (4) 目の代わり


盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (4)

目の代わり

  バス停やポストなど「面」上に有るものを探すのも盲導犬にとっては大切な
作業だが、視覚障がい者としてやって欲しいことがある。それは落とした物を拾
って見えない者に渡してもらうこと。

 盲導犬と一緒に歩くとき、できるだけ左の道端によって歩くようにしている。
一定の高さまでの障害物については犬が避けてくれるが、路上駐車している大型
の車のミラーや垣根越しに突き出した枝葉までは目が届かず、ようしゃなく顔面
を直撃する。それで外出時は前つばのしっかりした帽子と眼鏡を着用するように
している。ところがうっかり木の枝に眼鏡がひっかかり路上に飛んでしまったり、
犬のブラッシング中にブラシがうっかり手から離れてしまったことや、囲碁をや
っていて碁石が床に転がってしまったことなど、そのつど「拾う」ということの
難儀さを思い知らされる。
 「目の代わり」として盲導犬に「拾う」という作業を習得してもらえたらどん
なに助かるか!聴覚や下肢の障害のある者への介助犬が活躍しているが、視覚障
がい者にとっても介助犬的な役割を果たすことで盲導犬の存在はなおのこと高ま
るだろう。
 共同訓練の中で、この作業ができるよう訓練士に申し出たことはある。うまく
できそうな気配もあったが、結果として実用化にはいたっていない。
 この「拾う」というプロセスの中で、見逃してはいけないことは、単に拾うと
いうことで終わらず、その目的物を視覚障がい者の掌の上に乗せるということが
重要である。同様に、「カム!」と呼び寄せたとき、視覚障がい者の身体にしっ
かり触れるように接近すること。近くまできていても、そのあたりをうろうろし
ているだけでは来たことに気づかず何度も呼ぶようなことにもなる。「近くにい
る」という距離感ではなく「触覚」による確認が必要。

 盲導犬になる犬には子犬のうちから視覚障がい者への関わり方を日常の中で学
習させておいてもらいたい。呼んだら体当たりするくらいに接してくる。ボール
遊びなどしたときも、必ず手元にもってくる。こうした楽しみながら学習したこ
とがその後の視覚障がい者との生活の中で生かされてくる。
 移動のサポートプラス「目を提供する視覚障がい者介助犬」としてグレードア
ップすることで、使用者が増えていくことを期待している。
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2021年11月18日

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (2)  面・線・点

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (2)

面・線・点

 晴眼者が「目」からの情報として得るものが「面」であるならば視覚障がい者
が得る情報は「線」であり「点」である。周辺を把握するために耳から得る情報
はある意味「面」ともいえるが、移動においての最終確認は「線と点」である。

 盲導犬の仕事は、側面にそって歩くこと(線)、曲がり角や段差のチェック
(点)、障害物の回避(点)の三つが基本であろう。
 この3点が確実にクリアできれば頭の地図を使えば概ね何処へでも行けると言
っても過言ではないかもしれない。

 5頭の盲導犬との共同訓練を通して感じたことは、「寄り」(線) 「コーナ
ーチェック」(点)の課題を5頭の犬それぞれに一定の条件下では見事にクリア
して「グッド」なのだが、共同訓練を終えて、さてユーザーとの歩行が始まると
環境の変化や指示するタイミングなどもあろうが、その動きがアバウトになって
しまうのも全ての犬について感じている。
 道路沿いに歩いているつもりでも、駐車などがあって、それを避けようと道路
の中央へ出て、そのまま道の真ん中を歩いていたり、角・辻があっても、そこで
止まらず素通りしてしまうことがある。こうなると頭の地図は役立たず、「面」
の状態の中に放り出されてしまったようなもので周囲との距離感覚が分からなく
なり、どの方向を向いているのかも定かでなくなる。早朝の散歩では道路を通る
車量も少なく朝日もまだうっすらとしているようなときなど、耳からの情報や日
差しを感じる触覚などが働かず迷ってしまうことになり、音声方位系(1万円以
上する)のようなものを手掛かりとしなければならなくなる。
 盲導犬は「目の代わり」をしてくれる存在である。しかし、犬自身は、何時も
寄り添っている人が「目の不自由な人」と認識している分けではなかろう。様々
な行動の中で、こうしたときはこのようにすれば褒めてもらえるとか、こんなこ
とをしたら叱られる、という経験の積み重ねが盲導犬としての動きとなっている
のだろう。
 基本中の基本練習。「線」で確実に傍らに寄る、「点」角・辻のチェック。そ
して、「ストレート」真っすぐ渡り切る、十字路やY字路に差し掛かったところ
では、しっかり止まり、「レフト・ゴー」左へ曲がるあるいは左の方の道を行く、
「ライト・ゴー」右へ行く。これらの指示を受けてできうるかぎり正確に言われ
た方向に足を向ける。
新パートナーと歩き始めてしばらくは、訓練を受けた環境でないこともあって、
犬によって差はあるが、ユーザーとしてはかなり苦労する。慣れてくれば、その
犬の得意・不得意も何となく分かってきて対処するが、知らぬ間に歩道から車道
へ出てしまっているなど後から振り返るとひやりとすることもある。
 諸事情もあって難しい点はあろうが、盲導犬になる犬全てに統一してトレーニ
ングすべきは前述の基本。その基本も多様なバリエーションを取り入れてどのユ
ーザーにとっても使用しやすいレベルを目指す。そのためにはトレーニングの半
分くらいは費やしてもらわねばならないだろう。
posted by よろてん at 15:39| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (3)   視覚障がい者個々それぞれのニーズにそった対応を 


盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (3)

視覚障がい者個々それぞれのニーズにそった対応を

 視覚障がい者といっても見え方・生活のパ ターンなどから盲導犬使用者と
してのニーズも様々である。
 5回の共同訓練を終え実際に37年間、盲導犬との行動を通して感じたこと。
以下は、今後のトレーニングの在り方についての私見である。

 基本トレーニング(線と点)が終わった段階で、候補ユーザーとなるべき視覚
障がい者とのペアを設定し、その視覚障がい者の生活・行動基盤に基づいたプラ
ンをユーザー・担当訓練士間で計画し、まずは担当訓練士の下、盲導犬に一定程
度の学習をさせた上で、その目的を達成できそうなことを踏まえた上で、ユーザ
ーとなるべき視覚障がい者との共同訓練を開始。各項目についてユーザー・盲導
犬ペアにおいて各項目がクリアできたかを確認して、全てをクリアできた段階で
最終ゴールとする。
 この工程は、「与えられる犬」から「コンシューマー」(使い手モデル)の考
えである。

 私のばあいは、横断歩道を渡るときは原則として点字ブロック(点ブロック)
の上に立ちたい。以前横断歩道の白線を目安にトレーニングされた犬と訓練に入
って、犬は横断歩道をチェックしていてもブロック状でなかったので横断歩道を
見過ごしたということがあった。在住地域によって必ずしもブロックが何処にも
敷設されていないところもあり、白線を目安としたチェックを求めるユーザーも
出て来るかもしれない。エレベータを使うユーザーもあろうが私の場合は見える
同行者がいない場合はエレベータを使わず階段やエスカレーターを使う。駅の改
札口を通るときも私の場合は、身障手帳を有人改札口で見せるが、ICカードを使
っている人の場合は、その改札口へ誘導することを求めるだろう。
 犬にとっても基本学習の中で将来使わないであろうテーマを一定時間教え込ま
れるよりも必須であるべきテーマに重点をおいて教えてもらった方が効果的であ
る。途中で違う事柄を導入されることで混乱するケースは多く体験してきたとこ
ろである。
 盲導犬歩行において、「寄る」 「止まる」 「方向を変える」という動的な
要素の他に、盲導犬には「目の提供」も期待している。
 点字ブロックや改札口・エスカレーターの場所などへの誘導。電車・バスなど
に乗車したさいの空席チェックなど。これらは身近におられる人の声掛けがあれ
ば解決することではあるが。

 訓練を終えてユーザー(視覚障がい者)が盲導犬とともに生活圏で行動し始め
たとき、不慣れからくる細かなトラブルはいろいろ生じてくる。慣れるまでは安
心とまではいかぬまでも安全を確保できることは必須である。そのためにも盲導
犬に託せることとユーザーがしっかり管理していくべきことを見極めていかねば
ならない。
posted by よろてん at 15:32| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (1)  触地図の効果


盲導犬の役割として視覚障がい者が求めるもの (1)

 私はあと数年で80歳の大台にのる。
 ここまで4頭の盲導犬と37年間歩いてきた。4頭目の盲導犬も10歳の定年を迎え
ることになった。さてこれからどうするか?今後、何時どのような環境の変化が
生じて盲導犬との生活が困難になることも考えられる。
 そうしたことも踏まえて盲導犬協会に、5頭目の盲導犬貸与について相談した。
結果、ユーザーとして犬を管理できる間は貸与するということになり、それこそ
最後の盲導犬との再出発となった。
 新パートナーの盲導犬は体重22s。これまでの4頭が30kg前後あったこと
からすると二回りほど小さい。盲導犬はユーザーの半分くらいの体重がないと何
らかの事情で踏みとどまらねばならないときのブレーキ役になれないと言われて
きた。ところが最近の盲導犬は総じて小さくなってきているという。乗り物や飲
食店を使うとき、足元に伏せさせておくには小さな方が良いが、実際に行動して
みたらどうだろうか?そうした課題もかかえながら、盲導犬・ユーザーそして盲
導犬歩行訓練士との共同訓練に入った。

触地図の効果
  私がまず訓練士にお願いしたのが触地図である。
日常的に盲導犬と一緒に散歩として使っているルートが7・8箇所ある。歩数で
いえば
4000から8000歩くらい。これらのルートを共同訓練の実施場所とするにあたり、
自分の頭の中にある地図を今一度確認しておくことにした。慣れた盲導犬との移
動では常にユーザーが支持しなくても経験的に盲導犬が「連れていく」というこ
とがある。本来はユーザーの支持にしたがって歩くのが盲導犬歩行。
 触地図というのは、鉄道・バス通り・枝道・川や駅などを指先で触って分かる
よう点や線をザラツキなども変えて作成する。距離感や曲がり具合などをより正
確に表現する。
 幾つかの工程を経て作成してもらったものを見せてもらって感激と驚き!
 これまで真っすぐ歩いていたように思っていたところがかなり曲がっていたり、
横断歩道の白線が引いていなかったところを平気で渡っていたり。全体的な配置
がよく分かる。
 事前に情報を得ておくことで、どのポイントで盲導犬に支持を出したり、より
慎重に歩かねばならない箇所などが確認できる。また、訓練を終えてから触地図
を見ながら具体的に反省点を振り返ることもできた。
 作成は大変な労力であったろう。関わってくださった人たちへ感謝!
posted by よろてん at 15:05| 京都 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする