このアンプ、見えない者にとっては分かりやすいディザインとなっている。オン・オフの電源の部分は押し込むと「オン」、それを押すとぽんと飛び出して「オフ」となる。凹みの具合でオン・オフが見極められる。昔は全てこの形であった。ところが今は、トグル式となって電源が入ったかどうかは、その凹凸では分からない。
また、アンプに接続しているプレーヤー・CD・チューナー・MD・カセットデッキなど、それぞれに選択できる大きなキーが付いている。場所さえ覚えておけば直ぐに目的のsourceを選べる。
修理不能ということであればやむを得ない。量販店へ出かける。ずらりと並んだもの、その多くが同じようなディザイン。全面真ん中にぼんとボリューム摘みがあり、その左右に電源ボタンとチューナーやCDの切り替え摘みがある。
まず、電源ボタンは何か音源をつけておいてボタンを押すことで音が聞こえて来るかどうかを見極めねばならない。この音源にしても、今持っているものは手触りでオン・オフが分るものがあるので、それをオンにしておくことで確認できるが、全てトグル式になったら面倒なことになる。
音源を探すモード切り替えスイッチも文字通り手探りの状態でくるくる回しながら耳を澄ませることになる。一応、このモード切り替えスイッチの感触が分かりやすいものを選んで購入する。
翌日、搬送されてきたアンプ。作業員に、プレーヤーからMDデッキまで、これまで使ってきた音源を六つの端子に繋いでもらう。今まで使ってきたアンプはカセットデッキも繋いでいたが、端子の数がないので、もしかしてテープをバックアップしなければならないときは端子を差し替える必要がある。
作業員いわく「今はコンポが多いので、こんなにいろいろな接続があるものは、作業ができない人もいますよ。いろいろ勉強になりました。面白かったです」と、おそらく視覚障がい者の客の所へ持っていくのだと聞いてきたのだろう。
彼らが思っていた状況と何がどう違っていたのかは定かでないが、幾つもの音源を耳からの情報だけで操作していることがそう思わせたのかもしれない。
同じころ、これも5・6年は使っているワンセグテレビの聞ける携帯ラジオ。リーブオンで知らせてくれる部分が使えなくなってしまった。
これもソニー製のものだが、なかなか親切なもので、まず音源のボタンを押すと「オン」の場合には2度ピッビといい、「オフ」にすると1度ピッという。テレビとAM・FMの切り替えボタンは、テレビがピッビと2度なる。選曲レバーが六つ並んでいるが、三つ目の所にはポツが付いている。選曲する場合、6チャンネル以降は2のレバーを2度叩くと8チャンネルになるが、そのさいにもピッピッと2度リーブ音が聞こえるので2チャンネル・8チャンネルの見極めがつきやすい。これらのリーブ音がならなくなって、いかにも使いにくい物体に変わってしまったことがよく分かる。
ならば、屋内でiHoneを使ってテレビが聞けるというJcomが宣伝しているものを使ってみようかというので、その設定工事に来てもらい、iHoneにアプリをインストールしてもらって、さて使えるか試してみると、ボイスオーバーに対応しておらず、手も足もでない。せっかく設定してもらったものではあるが、これでは使い物にならず再度工事に来てもらって元の状態に戻してもらう。
リーブオンのならなくなったラジオの代替えを求めて量販店へ、ありました!やはりソニーのラジオで前に使っていたものと同じようにリーブ音がついたもの。これを手にしたときはホッとした思いだった。
企業は、もっと多様なニーズのあることを踏まえて、たんにディザインだけに拘るのではなく、より広い視野にたって個々のユーザーに対応していける技術を競って欲しい。
少なくとも音響製品などは「耳から楽しむ」ということを考えれば、視覚障がい者などは、顧客としてのターゲットに入っていて良いはずだが。