2014年07月30日

利尻・礼文への盲導犬とのツアー旅行 (その4)

CIMG0887.JPGCIMG0884.JPG「なぜ盲導犬にコートを着せるの?」

前日の、宿舎、、部屋の中にあったユニットバスは、湯に浸かるのがやっとであった。それで、添乗員のTさんに「今日の宿舎の風呂は昨日と同じようなものでしょうかね」とさりげなく尋ねておいた。
Tさん、宿舎に問い合わせ、交渉してくれたのだろう「午後10時からだったら家族風呂を使ってもらっても良いということですが、どうですか?」と尋ねてくれる。常なら寝ている時間ではあるがお願いすることにする。
午後10時を待って風呂のある別棟へ向かった。早春を思わせる気温の上に強い風、持参したセーターを着込んでも身が縮む。
しかし、数人が入れる湯殿にゆったり手足を伸ばし、頭から足の先まで洗って、再び外気に触れたときは、心身ともほっかりと、行きの寒さは感じず、その夜は気持ちよく眠れた。

翌朝、朝食をとるために別棟へ向かった。ここではスリッパに履き換えねばならず、おっくんの手足を拭いていると、後から来たツアー客が、行く手を阻まれながらも、「まあ、今日は、また違うコートを着てるんやね」と話しかける。「そうなんですよ、犬の方が我々より衣装もちですよ」とおっくんに代わって笑いながら返答する。
実は、昨日も別のコートを着せていて三日間それぞれ違うものを着せているのだが、目立つものとそうでないものがあるようだ。
このコート3着と、朝夕のフード三日分とホテルの部屋の中で伏せさせておくときに敷いておくシートなど、犬に関する荷物で私のリュックはそれなりの量となる。
犬のコートについては、「あんな窮屈そうなものを毎日ファッションのように着せ替えて」と見ている人が少なくないのではないかと感じている。そんなこともあって、ツアー旅行の中では、ことあるごとに「犬の毛が少しでも周囲へ飛ばないようにするためのマナーコートです」と説明するようにしている。そうすると、「へえ、気を使ってくれたはるのやね」と、知って、はじめて理解してもらえる。

花の島礼文島は高山植物の宝庫である。車もほとんど通らない散策路をガイドの説明を聞きながら歩き出す。レブンなになに草などの名前がいくつも出てくるが目に留まって初めて名前が覚えられるもので、たんに耳から名前だけが入ってきても記憶にはほとんど残っていない。途中までは説明を聞きながら歩いていたが、とにかく寒い!両方から海が迫る場所もあって風も強い。おっくんの調子も日常に戻っていることもあり、車の通らない道ということもあって残りの15分ほどを早足で歩く。何の障害物もなく手をしっかり振って歩くのも久しぶりである。
再び、稚内へ戻ってみると、そこはまぎれもなく夏である。

おっくんにとっては初めての遠距離の旅行。腸の調子もようやく回復時期というときで、多少気がかりな中で出かけたが、結果としては無事に、そして歩きのサポートはしっかりと「グッドグッド!」である。
また、ツアーのメンバーの人達とのコミュニケーションを得るためにもおっくんの存在は大きい。
そして、三日間を通して実際に盲導犬と視覚障がい者が一緒に行動する姿を目の前にして、犬にはあまり関わってはいけないこと、視覚障がい者に対する最小限の関わり方のなにかしらは感じ取ってもらえたのではなかろうか。

同じツアー旅行会社を使っていることで、盲導犬が、視覚障がい者が、何ができ、どんなことに不自由しているかを、それなりに理解し、添乗員仲間の中でも伝えていってくれている部分があることは心強い。

これからもチャンスがあれば盲導犬と共に新たな発見を求めて出かけていきたい。
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2014年07月24日

利尻・礼文への盲導犬とのツアー旅行 (その3)

CIMG0850.JPGCIMG0859.JPGCIMG0879.JPG盲導犬を通して知ってもらえること
夕食は、海に沈む夕日を一望する窓際のカウンター席。雲丹三昧のメニューとはどのようなものが出て来るのか?日頃は、にぎり鮨の中にある雲丹などは避けていたくらいなので食べられる物が出て来るだろうか?と楽しみというより不安半分で運ばれてくる内容に注目する。
雲丹は輸送中に崩れないようにミョウバンに付けられているようだ。そのことが原因しているのかどうかわからないが、味わいが変わってしまうようだ。なるほど現地で食するものは、ツアー客の言葉を借りれば「クリームのような」というのがまさに当たっているような味。

食事を終えて午後8時を過ぎても、まだ外は明るい。明くる朝、午前3時過ぎ、もう外は明けている。まさに白夜である。
朝食までの時間散歩に出る。他のツアー客も多く見受けられる。「ワンちゃん元気になりましたか?」とあちこちから声がかかる。昨日、胃液を出したことを添乗員から聞いておられるのだろう。「ワンちゃんと一緒に写真に入らせてもらってもよいですか?」と犬をはさんでシャッターを切ってもらったり、「獣医師が使う内視鏡を作っているんです」というような話から会話が進んだり、盲導犬効果はいろいろなところで力を発揮する。
利尻山は、そのときどきで表情を変えるそうだが、早朝の景色は見事なものであったようだ。

利尻島での観光で印象に残っているのは、姫池の散策、池の周囲は1・2km・木道が続いているという。上高地の木道を体験したときは途中で引き返したことがある。木道の幅を聞いてみると、あのときの幅よりは広いという。犬と私と家人が横に並んで歩けるほどというので出発した。しかし、3分の1も行かぬ所から幅が狭くなり、家人を前に、その後ろからおっくんと私が付いて歩くという形になる。こういうときに白杖を持ってきておいたら自分で足元を確認できたのに、と悔やんでみても後の祭り。おっくくんは、左端ぎりぎりを歩き、私もすり足に近い状態で前進。指先だけで家人の肩や背中を触れると「もっとしっかり持っていないと」と、家人はその不安定さに不安を感じるようだ。しかし、私としては、もし、ふらつくようなことがあって不用意な力が加わった場合、家人を押してしまわないかとの心配の方が強く、できるだけ言葉で事前に状況を説明してもらいながら、ちょっと広い場所にでたときは後続から来る人たちに「どうぞ」と追い越してもらって周囲の風景説明を聞く余裕もあまりないまま、「後どれほどの距離?」と後ろから問いかける回数が多くなる。元の場所へ戻ってきたときはホッとの思い。

ツアー客の中に介助犬に関わってきている人がおられ、その人いわく「狭い所を歩くとき、犬は右足に力を入れてサポートしていましたよ、と犬の動きについての状況説明もしてもらう。

船に乗って利尻島から礼文島へ。
レブンアツモリソウを見るための群生地遊歩道へ入れるのは今日までらしい。
レブンアツモリソウは「種の保存法」による特定国内希少野生動植物種、環境省レッドデータブックの絶滅危惧種に指定されており、礼文島内でも生育している場所は限られており、この群生地は、盗掘防止のため監視員が常駐している
監視員の目の前を通り過ぎようとすると、「犬はだめ!」と声がかかるが、添乗員やツアー客の中からも「盲導犬です」という声が上がり、そのまますんなり入ることはできたものの、その貴重な花に触れさせてもらうことはできなかった。なんでも、その丸い花の中の蜜を食するのは女王蜂のみだという。



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2014年07月15日

利尻・礼文への盲導犬とのツアー旅行 (その2)

    「盲導犬ユーザーに対する配慮」

宗谷の岬ではハマナスの花に触れてみる。思っていたよりは小さな花弁で細やかなところまでは触察するのは難しく、ならば、何時も旅行で楽しみにしているソフトクリームで食察してみる。ほんわか北端で味わうバラの香りが漂ってくる。
観光バスに乗り込む前、「盲導犬のためには、どの席が良いですか?」と添乗員のTさんから訪ねてくれる。「一番後ろがゆっくりしていそうなので」と、自由席になってもいる最後尾の席に座る。それでも、そうそうゆったり盲導犬が寝そべれるだけのスペースはない。揺れも前の席よりはそれなりに強い。
窓外には、あちこち「最北端の」の表示が見られるとか。大きな風力発電機が何機も並んでいるようだ。

稚内港に付く。礼文島へのフェリーに100分程乗ることになる。ツアー客はカーペット敷きの部屋で適当に寝そべって時間を送ることになるのだという。ここでもTさんが「別料金にはなりますが、椅子席のあるラウンジがあります。どうされますか?」と訪ねてくれる。「それならラウンジで」と即座に決める。Tさんに同行してもらってチケットを買いに行く途中、急におっくん立ち止まる。「えっ!ここで大便でも催したか?」とかなりあせる。数日前から日に2回の排便ペースで来ているのでありえないことではないが、通常外出先の道路上で催すことはこれまでにはなかった。それでも、早朝から出かけ、幾つも乗り物に乗ってきた今!急いでハーネスに取り付けてあるバックの中から排泄用のベルトと袋を引っ張り出して、「ちょっと待ってよ!」と声をかけながら尻尾に袋を括り付ける。その直後おっくんは口から胃液のようなものを吐き出す。やはりバスの振動がこたえたのか?あるいは、朝早くフードを食べて、通常なら夕食のフードを食べる時間に近づいたことから胃液がでたものか?しかし、その後は通常の状態になってほっとする。

フェリーに乗船、ラウンジ席に上がると、まだ誰も他には乗客はいないようだ。担当職員が「何所でも好きな処へ座ってください」と、ここでも犬がダウンしやすいように気を使ってくれる。そして、ならばと座った席の番号は、「マルマル番を売らないように」と、チケット売り場に無線で連絡を入れてくれている。
出港とともに、「流氷とけて春風吹いて」とダ・カーポの宗谷岬の歌が船内に流れる。おっくんは、今度はゆったりした足元でリラックスしたふうに横向けに寝そべる。トイレに立つとやはり船ドクトクの揺れを感じるが椅子に座っているとバスに揺られているよりはるかに静かで、この分ならおっくんもほっとできるのではなかろうか。

利尻に近づくと、今度は利尻島の歌なるものが聞こえてくる。ICレコーダーもバックに入れておいたので、記念のためにと録音ボタンを押すがあまり良い録音はできなかった。
利尻の桟橋を降りると風の勢い・冷たさが違う。朝、家を出たときは半袖姿であったが、長袖の上着をはおる。

 今夜の宿舎は雲丹を食べさせることで有名だという。割り振られた部屋に入ると、まず気になるのがトイレやふろのスペース。これは、犬のトイレをさせる場合にも、そして、私が大きな風呂場を使えないことから自室で入浴したいという思いからも重要なポイントであるが、残念ながら何れの点からも厳しい状況。
ただ、部屋を出て真向いの所に非常口があり、そこを出ると広いベランダのような空間があって、ここなら袋をつけて排泄をさせるには十分なスペース。

これまでのツアー旅行でもそうであったが、私が視覚障がい者であることを配慮して避難をしやすい場所を部屋割りとして当ててもらっていることを感じている。


posted by よろてん at 11:44| 京都 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月12日

利尻・礼文への盲導犬とのツアー旅行 (その1)

 CIMG0848.JPG   「なぜ、盲導犬の名前を知らせたくないのか?」

 今年、北海道は例年にはない梅雨空が続いていたという。
しかし、幸いにも我々が出かけた数日間はすかっと晴れた日が続いた訳ではないが、利尻富士の山並みをしっかり見ることができる瞬間もあったようだ。

我が盲導犬「おっくん」も、出発日の数日前から便が緩み、欠食させることから徐々にフードを増やしている時で、当日を迎えるまで一緒に行けるかどうか便の塊具合を見ながらの様子見であった。
それでも、療養食を与えていることもあって、ころころした便を出して、フードの量は日ごろからみるとまだ少な目ではあるが、動きは変わらず、体重もさほど減ったふうでもなし、何よりも外出を喜ぶこともあって、一緒に出掛けることにした。

先代のユニスは、北は北海道から南は石垣島まで全国をあちこち出かけていたが、おっくんは、飛行機も船も初めてである。

早朝4時過ぎにフードを与え、5時過ぎにはタクシーに乗り、リムジンバスに乗り換えて、伊丹から8時には羽田行きの飛行機に乗っていた。
いざ離陸するときに、どんな顔をするかと思っていたが、「ん?おや!」とちょっと頭をもたげかけたが、特に変わった様子もなく、羽田へ到着。
ここで、空港内の車いす用トイレの中で、おっくんの胴体にまき付けたベルトに袋を付けて、その中におしっこをさせてすっきりしたところで稚内行きの飛行機に乗り換える。

この飛行機は羽田行きよりはちょっと小さい。我々は一般客よりは一足先に乗車させてもらって、盲導犬がいることもあって、家人と二人だが3人用の座席を提供してもらっている。
一般客が全員乗り込むまで、客室乗務員の一人が私の手をとって、ヘッドフォンの扱い方などを教えてくれる。そして、「左前方と、こちらの右方向に避難通路があります」と説明してくれる。「11時方向と2時方向ですね。我々にはクロック表示で言ってもらえると分かりやすいですよ」と伝える。「なるほど、勉強になりました」と納得の様子。
しかし、こうして丁寧に案内してくれたのは行き帰り4回の内、このときだけである。
社内教育として見えない者に対する指導が成されているのかどうか?

稚内に降り立ったところで、今回担当の添乗員Tさん、盲導犬を見て「ユニスくんですか?」と、前の担当添乗員から話は聞いているようだ。「いいえ、ユニスは引退して新しい犬です」、「名前は何というのですか?」。この問いかけは同行のツアー客からも何度か発せられた。それに対して、「すみません、おっくんとしておいてください。皆さんが名前を呼んでくださると犬は気がそちらの方へいって仕事に集中できないことがありますので」と、一見あいそのないような返答を返すが、「なるほど!」と、その受け入れは抵抗のないものであった。
先代のユニスは、その名前を旅行中公表していて、それで特に問題を感じた訳ではないが、ツアー客それぞれが生活の場へ帰られたときに知り合いに盲導犬のことを話される時に、「盲導犬ユーザーは、なぜ犬の名前を教えたがらないのか?」を伝達してもらえたらという思いからである。

posted by よろてん at 21:16| 京都 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする